ベトナムの環境問題は深刻!? 現状と対策について解説

ベトナムの環境問題は深刻!? 現状と対策について解説

ベトナムの環境問題は年々深刻になっています。近年、ベトナムは農業国からの転換を目指し、積極的に国の発展を行っています。しかしその一方で環境問題に対する規制が不十分であったため、様々な問題を引き起こしています。ホーチミンやハノイなどの大都市におけるバイクの排気ガスや繊維産業の工場排水など原因は様々です。今回はベトナムの環境問題の現状やそれに対して行われている対策などについて紹介します

 

 

ベトナムの環境問題の現状

 

ベトナムでは急速に経済発展が進んでおり、ホーチミンやハノイなどの都市部や地方都市に産業構造の変化をもたらしています。しかし、その一方で様々な環境問題が生み出されているのは事実です。ここではベトナムで発生している環境問題の現状とその原因について説明します。

 

大気汚染

大気汚染の原因は車両やバイクの排気ガスや産業施設からの有毒ガスです。ベトナムではバイクでの移動が主流です。ハノイやホーチミンなどの都市部では日夜問わず数多くのバイクが行き来しています。都市部では人口密度が非常に高いため大気中のCO(一酸化炭素)、SO2(二酸化硫黄)、NOx(窒素酸化物)、鉛、粉塵などの濃度が上昇しており、世界で最も濃度が高い都市に選ばれています。

特にハノイではWHO(世界保健機関)の基準値を上回る大気汚染を記録しています。2017年世界経済フォーラムでは、空気汚染度が132か国中123位にランクされワースト10に入っています。都市部で生活している人の中には健康被害を訴える人もいます。

大気汚染により気候変動や気温上昇、海面上昇など様々な問題を引き起こしています。近隣諸国からの大気汚染に関する問題も発生しています。具体的には粒子状物質(PM)や水銀、酸性雨です。今後は周辺諸国との環境問題解決に向けた対策を行う必要があります。

参照:世界の医療事情(外務省)

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水質汚染

ベトナムの水質汚染の原因は生活排水や産業排水、市民による河川や湖へのゴミのポイ捨てなど複数の要因があります。政府は水質汚染を改善しようとしていますが、汚染処理施設の技術力の欠如や施設数の不足から改善が間に間に合っていません。近年、政府は環境対策の強化を行っています。具体的な対策として、工場への立ち入り調査の強化や都市内河川の改修、海外諸国からの技術や人的支援による下水処理施設の建設です。しかし、政府の対策にも関わらず、年々排水量の増大に追いついていないこのが現状です。

過去にはベトナム、ハイズオン(Hai Duong)省で発生した中国企業による「環境事故」がありました。中国系繊維企業が化学的酸素要求量や生物化学的酸素要求量、pH値など5つの技術分析指標で基準値を超える毒性の排水を流していたそうです。同社はこの事件で6億7200万ドン(約336万円)の罰金が科されました。この事件によって池の魚が生息できないほどの水質レベルに達している場所もあります。

参照:環境汚染問題で繊維企業を調査(アパレルリソース イン インドシナ)

 

土壌汚染

ベトナムの土壌汚染は、散布した農薬が土壌に残る残留農薬や不適切な廃棄物処理によるものです。使用された窒素農薬やカリウム農薬の約50%、リン酸農薬の約80%が土中に残存しています。農薬が土壌に残ることで土壌に化学的な変化をもたらし、農業の生産性の低下を引き起こしています。廃棄物処理については生活廃棄物と産業廃棄物が分類されることなく収集されそのまま埋め立てられることで土壌汚染が発生しています。しかし、廃棄物の収集率は全国で5割ほどにとどまっており、収集されない廃棄物は川や空き地にそのまま捨てられています。これらの廃棄物問題から土壌汚染が発生しています。

 

農業汚染

農業汚染は肥料の不適切な使用や労働安全基準が厳密に遵守されていません。不適切な薬剤を大量に使用することによって農業汚染が発生しています。一部の農家ではより大きな利益を追求するあまり故意にこのような行為がなされている場合があります。農業汚染によって土壌汚染や水質汚濁を引き起こしている地域もあります。

農業汚染は植物保護化学剤によって汚染が拡大しています。亜鉛コーティングの紙製容器やビニール袋、プラスチックボトルなどの容器内に残った化学剤が農地や排水溝、水路に漏れて農村環境の土壌汚染や水質汚染も同時に引き起こしています。

 

 

その他の環境問題

 

ベトナムでは大気汚染や水質汚濁、土壌汚染、農業汚染以外にも様々な環境問題が発生しています。

 

・ゴミ処理問題

ベトナムでは一般的に都市で発生したゴミは埋め立て処分が行われています。しかし、埋め立て処分場では適切な処理が行われておらず、悪臭が発生しています。また、ゴミが回収されず河川や道端に捨てられ水質汚濁などの環境問題を引き起こしている場合があります。

畜産業では家畜の糞尿が未処理のまま排出されていることがあり、それが水質汚染や土壌汚染につながる場合もあります。

 

・車両やバイクによる騒音

ベトナム都市部では年々車両やバイクの交通量が増加しています。車両やバイクの急速な増加によって騒音被害が都市部では報告されています。近年では騒音問題を解消するため、都市部では法令を策定し罰金を科しています。

 

・森林破壊

森林破壊もベトナムでは大きな問題になっています。燃料や商業用に伐採が行われ毎年多くの樹木が切り倒されています。また、ベトナム戦争中に散布された大量の枯葉剤の影響で、広大な面積のマングローブ林や森林が破壊されました。それだけでなく、ダイオキシン汚染も残しており、大気や水、土壌の汚染につながっています。

 

 

ベトナムで行われている環境問題対策は?

 

都市の発展の裏側で拡大する環境問題を解消するために様々な環境問題対策が行われています。特に政府が重要視しているのが法制度の整備です。ベトナムでは環境汚染の深刻化を受け、環境問題を解決するための「環境保護法」が施行されています。この法律は1994年に施行され、環境に対して適切な評価を行い、環境保護に向けた計画が行われるようになりました。また、廃棄物の処理に関する規制も定められ、問題解決に向けた取り組みが進んでいます。現在は「環境保護国家戦略」という2010年までの戦略や2020年に向けたビジョンを内容とするプロジェクトが進行中です。

その他には資源・環境省が環境に関する政策の立案や環境管理などの役割を担い始めたことです。以前は環境問題対策を担当する省庁がありませんでした。同省が環境対策の中心的な役割を担うことで環境問題解決に向けてより計画的に取り組めるようになりました。

 

 

日本が援助している環境対策の現状

 

現在、日本はベトナムに政府開発援助の一環として環境対策の支援を行っています。具体的な協力内容としては水質管理や上水道・排水・汚水処理、廃棄物管理、大気環境管理などが挙げられます。日本はベトナムに向けて現地調査や専門家派遣、技術的支援を行っており、環境対策に向けて環境協力を進めています。ベトナムに対する日本からの支援は1998年から行われており、ベトナム各地で協力プロジェクトが立ち上げられています。

ベトナム政府は、今後環境問題に重点を置き、国内の取り締まりを強化しています。しかし、ベトナムの環境問題はますます深刻化しており、日本のようなトップレベルの環境技術を求める傾向は強くなります。

参照

・第4回日本・ベトナム環境対策対話の結果について(環境省)

・ベトナムにおける環境汚染の現状と対策、環境対策技術ニーズ(環境省)

 

 

まとめ

 

ベトナムでは急速な経済発展は進む一方で環境問題も同時に深刻化しています。環境問題による国民の健康被害も発生しており、政府の環境問題への対策が要求されています。また日本の環境対策への協力も重要な役割を果たしており、環境問題の解決に向けた取り組みが期待されます。

※この記事に記載されている情報は2018年7月のものです。本記事に記載されている情報は予告なしに変更される場合がございますが、ご了承ください。

 

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