写真を通してベトナムへの社会貢献を。</br>キヤノンマーケティングベトナム社・横田裕史社長

2018年01月19日(金)00時00分 公開
写真を通してベトナムへの社会貢献を。</br>キヤノンマーケティングベトナム社・横田裕史社長

ベトナムが持つ素晴らしい自然遺産や文化遺産に光をあてることを目的に毎年開催されている「ベトナムヘリテイジ写真賞(Vietnam Heritage Photo Awards)」。これはベトナム全土の写真愛好家が誰でも参加できる写真コンテストで、2017年度は、226人の応募者から3479点の作品が寄せられた。2012年の第1回からメインスポンサーをつとめているのが、キヤノンマーケティングベトナム社。同社の横田裕史社長に話をお伺いした。

 

 

写真:2017年11月21日(火)、ホーチミン市のウィンザープラザホテルで、表彰式が行われた。写真中央左が『ベトナムヘリテイジ』誌のレ・タン・ハイ編集長、右がキヤノンマーケティングベトナム社の横田裕史社長。

 

──今回の応募作品をご覧になった印象は、いかがでしょうか。

 

横田 レベルの高いのに驚きました。写真を見ていると「ああ、ここにも行ってみたい」という場所がいっぱいです。当社には、もちろん写真の専門家がいますが、彼らが見ても思わず唸るような作品が目白押しでした。「これは奇跡の一瞬を捉えているな」と感嘆する写真もあります。ベトナム全土からさまざまな風景を切り取った作品が寄せられるので、「ベトナムは本当に、素敵な風景がたくさんあるなあ」と再認識しました。ただ交通インフラが整備されていなくて、なかなか行きずらい場所もありますが。

 

写真:表彰式では入賞者に賞品が手渡された。1位(3人)の賞品は、キヤノンのEOS 700D(18-55mmレンズ付き)と、同じくキヤノンのプリンターPIXMA TS8070。2位以下の入賞者にもキヤノンの製品と、後援をした8社から旅行券や食事券が提供された。

 

──御社は、この写真コンテストのメインスポンサーを、初回からつとめておられます。その理由をお聞かせ頂けますか。

 

横田 弊社は、もともとカメラの会社として創業し、今も事業のいちばん大きな柱はカメラです。そして我々は「写真は文化だ」と信じています。だから「ベトナムの文化活動をサポートしたいな」と考えたときに、「写真コンテストのスポンサーをする」というのは、自然な選択肢だったと言えるでしょう。外国人に知られているのは、まだまだハノイ、ホーチミン、ダナンといった主要都市が中心です。しかしベトナムには、それ以外にも素晴らしいところがたくさんあります。それらの「まだあまり知られていない素晴らしい風景」を発掘するこの写真コンテストは、たいへん意義があると考えています。

 

──本業にも何かプラスの効果はありますか?

 

横田 そういうことはあまり期待してないですね(笑)。ベトナム社会への文化支援活動の一つと考えております。

 

──社会貢献というと、御社はこれに限らずいろんな活動をされています。中でも有名なのが学校です。この8年間で57の学校建設を支援されたと聞きました。

 

横田 はい、そうです。山奥の村など、僻地と言われるところに教室を作っています。ハノイやホーチミンといった大都会は教育環境に恵まれていますが、地方はまだまだ信じられないくらい貧しいのです。子どもたちが学ぶ教室はボロボロで、まともなトイレすら備えていないところも珍しくありません。屋根がトタンで、夏は蒸し風呂のように暑くなるところもあります。もちろんエアコンなんてありません。「子どもたちが勉強しやすい環境を作りたい」、そう願って活動を続けています。

 

写真:2017年9月21日に引き渡し式が行われたザーライ省の学校。支援物資も一緒に寄贈された。

 

──カメラ・OAメーカーである御社が、どうして学校なのでしょうか?

 

横田 まず「教育は国の基本である」ということ。ベトナムは目覚ましい発展をしていますが、 まだ新興国です。そんなベトナムを背負って立つのは、今の子どもたちです。彼ら彼女らに、少しでも良い環境で勉強してもらいたいと思っています。

次に「社会貢献をするなら何か形のあるものを」という考えです。「お金を渡す」という手っ取り早い方法もあります。でも、私たちは目に見える援助をしたいと考えています。学校であれば、ずっと残りますよね。例えば、2017年にベトナム中部を襲った大型台風の被災者に対しても、義援金ではなく救援物資を送りました。

 

写真:以前、子どもたちが学んでいた教室。

 

──御社が建設を支援した学校を訪れたことはありますか。

 

横田 新しい学校ができると、私自身が必ず現地に足を運び、完成記念式に参加しています。

 

──それは驚きです。御社が建設支援されているのは、僻地ですから時間がかかりますよね。

 

横田 交通の不便なところだと、最寄りの空港から、悪路を6時間くらい車に揺られて行くこともありました。そういうところで完成式をすると、「この村の住人全員が来てくれたんじゃないか」と思うほど、人が集まります。そこで、現地の人たちと食事をして、お酒を酌み交わす。こういう交流をすることが大切だと思いますし、私自身、幸せな気持ちになれるんですよ。

 

写真:キヤノンマーケティングベトナム社の支援で新しくなった教室。

 

──特に印象的だったところはありますか?

 

横田 ベトナム中部にあるバンメトートの福祉施設に行ったときのことは、今でも忘れられません。孤児、障害者、年配の方が入居されている施設でした。あまりにも悲惨な状況だったので、私はついに一枚も写真を撮ることができなかったほどです。また少数民族の住む村に学校を作ったときは、ベトナム語すら話せない人たちがいるので驚きました。しかし、そういう僻地にいる子どもたちは本当に純粋な心を持っていて、私のほうが癒されるんですよ。

 

──学校ができるたびに現地に赴かれるとのこと。今まで何省くらいを訪問されましたか。

 

横田 ベトナムにある58省と5直轄都市のうち、今までに半分くらいは訪れているでしょう。中には外国人には名前すらほとんど知られていない土地もあります。そういったところで、予想もしていなかった素晴らしい風景にであうたびに、「ベトナムには、まだまだ知られていない素晴らしい場所がたくさんあるなあ」と痛感します。我々がスポンサーしている「ベトナムヘリテイジ写真賞」は、まさに、そういう風景や文化を写し取った作品が多数あります。それらを見て、ベトナムの人が自分の国土と文化に誇りを持てるようになって頂けたらと願っています。また、日本人をはじめとする外国人が、ベトナムに興味を持って、もっとベトナム各地を旅するきっかけを提供できれば、嬉しい限りです。

 

──ありがとうございました。

 

(取材日:2017年12月21日)

 

「ベトナムヘリテイジ写真賞(Vietnam Heritage Photo Awards)」について

 

この写真コンテストは雑誌『ベトナムヘリテイジ』が主催し、2012年から毎年開催されているもの。応募作品の中から選ばれた100点の入賞作品を展示する写真展が、半年にわたってベトナム主要都市で巡回開催される。またこれらの作品を収録した写真集も発行されている。

 

 

写真:表彰式の会場には入賞作品のパネルが飾られ、来場者が熱心に見入っていた。

 

今回の写真展は、2017年10月から2018年3月30日まで、以下の日程で開催される。

10月26日~29日 ホーチミン市

11月10日~13日 ハノイ

11月21日~23日 ハノイ

11月22日~28日 ホーチミン市

11月23日~2018年3月30日 ダナン・チャム彫刻博物館

12月22日~28日 ホーチミン市

2018年2月18日~28日 ハノイ・エコパーク

 

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