〈写真:イメージ画像〉
ベトナムでは約1500万人が精神疾患を抱える一方、国内の精神科医は1000人超にとどまり、精神医療を担う人材不足が深刻化している。
保健省の2023年の統計では、慢性的な不眠や不安障害、重度のうつ病などを抱える人のうち、正式な医療を受けている割合は29%で、うつ病患者でも約3分の1にとどまる。
バックマイ病院精神保健研究所によると、精神科医は人口約1万人当たり1人で、先進国の標準的な水準の約8分の1である。
人材不足は若手医師の進路選択にも表れており、9月9日にハノイ医科大学で行われた専門科選択では、研修医試験の成績上位20人のうち精神科を選んだ医師はいなかった。
軍医学院103病院精神科によると、ストレスや心理的な問題の治療需要が増える一方、同科では過去2年間に精神科研修医がいない状態が続き、一部の医療機関では神経内科医が精神科診療を兼任している。
ある精神科医は、若手が精神科を避ける最大の壁として社会的な偏見を挙げ、自身も大学5年時に進路を決めた際、家族から強く反対されたという。
精神科では機器や血液検査だけで診断できず、患者の病歴などを詳細に聞き取る必要があるほか、急性期の患者から暴力を受ける危険もあり、若手医師にとって身体的、精神的な負担が大きい。
別の精神科医によると、研修医は午前6時から午後10時30分を過ぎるまで学習や診療にあたることがあり、自殺を図る患者への対応などで負傷するケースもある。
専門医不足が続けば、十分な訓練を受けていない医師による診療が増え、適切な診断や治療の機会を逃すリスクにつながると指摘されている。
専門家は人材確保に向け、精神科の職業手当引き上げや学費・生活費の支援対象拡大に加え、医療機関での緊急警報システムや暴力対応手順、医療従事者への心理的ケア体制の整備を求めている。
精神科医は現在も高い水準の職業手当や重点的な研修支援の対象となっているが、生活を安定させ、暴力などのリスクに見合う水準には達していないとの見方を示している。
また、心理相談や専門的な心理療法を公的医療保険の給付対象として整備し、精神医療の財政基盤を強化するとともに、受診への社会的な偏見を減らす必要性も指摘されている。
厳しい環境の中でも、治療によって不安やうつ症状が改善し、薬を必要としなくなった患者などの回復が、精神科で働き続ける若手医師の支えになっている。




































