高齢化するベトナム、年金も貯金もない高齢者の苦悩

2022年08月16日(火)10時11分 公開
高齢化するベトナム、年金も貯金もない高齢者の苦悩

<写真:VnExpress >

 

急速に高齢化が進むベトナムでは無年金や無貯蓄の高齢者が増加しており、国として早急に取り組まなければいけない大きな課題となりつつある。

 

専業主婦であるトゥーさん(61)と建設作業員として働く夫(66)の収入の大半は医療費として消え、日に日に家計は苦しくなるばかりである。

 

娘から仕送りを貰ってはいるが、娘の夫はトゥーさん夫妻への仕送りを快く思っておらず、「どうしてお金を渡さなければいけないのか」という陰口を聞いてからは、仕送りを受け取ることにも気が引ける様になったという。

 

元々農家を営んでいたトゥーさんは、戦後から小商いをするようになった。夫婦ともに年金はなく、老後の蓄えはない。

 

トゥーさん夫妻が30代の頃には何億ドン(1億ドン=約57万円)もの貯蓄があったが、突然の病気によって貯金のほとんどを使い果たし、今では2000万ドン(約11万3930円)も残っていない。

 

ベトナムでは900万人の高齢者がトゥーさん夫妻と同様の境遇にあり、生活苦に陥っている。

 

1990年代当時のベトナムにおける主な職業は農業であり、現在60歳以上世代の73%が無年金となっている。

 

人口・家族計画化総局の報告によると、農村部に住む高齢者の65%以上が安定した収入のない農民である。こうした高齢者の多くが老後のための十分な蓄えがなく、経済的な困難に直面している。

 

グエンさん(63)によると、故郷の同世代の95%が農民で収入の大半を子育てに費やしており、貯蓄をすることができていない。

 

グエンさん自身は、変形性関節症の治療費のために4つか5つの仕事を掛け持ちしている。時には路上で宝くじを売り、基本的な生活に必要なお金を稼いではいるが、社会保険にも健康保険にも加入することはできない。

 

保険加入のためには年間1000万ドン(約5万6960円)以上の貯蓄が必要となり、彼女が条件を満たすことは非常に困難である。

 

人口・家族計画化総局の予測では、2019年には1140万人に達した60歳以上の高齢者が、2030年には1800万人に増加して人口の17.5%を占めるようになる。

 

ベトナムの高齢化は先進国よりも早く、政府は高齢化対策にあまり時間を掛けられていない。

 

2050年には老齢人口比率が43%になると予測されており、将来的には現役世代の負担が大きくなることを意味している。

 

同国の一人暮らし高齢者数は現在430万人である。

 

ホーチミン市で商売をするニュンさんもその1人で、70歳を目前にした今でも日々の収入への不安に苛まれている。

 

彼女は屋台で食べ物を売って1日20万ドン(約1140円)ほどを稼ぐが、日によっては収入が少なく生活費を借りなければならない。

 

国連人口基金によると、社会保険制度への加入率が低いベトナムでは高齢者の76%が無年金であり、2030年には約1200万人の退職者が無年金になると予想されている。

 

専門家は社会保険制度の改正とセーフティネットの強化を行い社会保険制度がリスクに対応できるようにする必要があると指摘する。

 

また、政府や民間企業は経験豊富で意欲の高い高齢者の労働力活用を検討するべきである。

 

ベトナムにおける高齢者の経済活動率は絶えず上昇しており、現在では40%に達しているが、多くのアジア諸国と比較すると低い水準となっている。

 

多くの専門家が、政府による高齢者のための雇用交換所の設立や、民間企業による高齢者雇用、定年引き上げといった高齢者向けの労働条件改善を望んでいる。

 

 

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