カンボジア人身売買の実態、ハイフォンの家族が子どもを救出

2022年08月30日(火)11時22分 公開
カンボジア人身売買の実態、ハイフォンの家族が子どもを救出

<写真:VnExpress>

 

ハイフォン市の4家族はカンボジアを訪れて数千ドルの身代金を支払い、知人に騙されて人身売買被害に遭った子供たちを救出した。

 

同市在住のトゥアンさんは3月下旬に10代の息子から「カンボジアに行って友人と一緒に働きたい」と告げられた。

 

トゥアンさんの息子にカンボジアでの仕事を勧めたのは、親友の父親であるグエン・バン・アイン容疑者(45)であった。アイン容疑者は若者4人を騙してカンボジアに連れて行っており、いずれの被害者も同容疑者の息子の友人であった。

 

ハイフォン市警察によると、アイン容疑者はこれまでに実刑判決4回を受けており、最後の服役中にバンとカウと名乗る受刑者2人と接触した。2020年の出所後に2人と再会し、人身売買の仕事を持ち掛けられた。

 

この2人は18歳〜40歳までの人々をカンボジアへ密入国させて人身売買仲介料を得る犯罪組織に所属していることが明らかになっている。

 

アイン容疑者は息子の友人らが学校を中退して家族を養うために働きたいと考えていることを知り、「カンボジアにいる友人が若い労働者を募集している。月に1800万〜2000万ドン(約10万6400〜11万8220円)の給料を支払う」といってカンボジアに出稼ぎに行くよう説得した。

 

3月30日夜、アイン容疑者と息子、その友人達の計6人でハノイ市のヌックガムバスターミナルまで向かい、翌朝になると6人はホーチミン市に向かった。ニンビン省を経過する頃、アイン容疑者は息子に「親戚が病気になったからすぐに帰るように」と言って1人で帰宅させた。

 

4月2日に5人はホーチミン市のミエンドンバスターミナルに到着し、そこからカンボジアと国境を接するタイニン省に向かってホテルで1泊した。

 

翌朝になると5人はカンボジアに向かう車に乗車してホテルを後にした。車が国境ゲートにさしかかった時、アイン容疑者が「HIVの薬をホテルに置いてきてしまった。取りに戻らなければならない」と言って去っていった。

 

その後、8人組の男が4人に近づき、そのままカンボジアへと連れて行った。

 

被害に遭ったうちの1人は「アインさんが去った時、私たちは騙されたのではと思った。しかし、8人組に何をされるか分からないと考えると、逃げる勇気はなかった」と振り返る。

 

4人はカンダル州にあるヨンユアンカジノに連行され、1日12時間の労働を強制された。仕事内容はカジノの顧客にアプリを使ってお金を借りるように勧めるといった内容であった。

 

日当は20ドル(約2770円)で、生活環境は非常に悪かった。与えられた目標を達成できない場合には2000ドル(約27万7100円)の罰金を科せられ、殴られることも多かったという。

 

カジノ経営者からは「お前たちはカジノに売られたのだから、施設の敷地外に出てはいけない。帰りたければカジノが支払った2400ドル(約33万2520円)の身代金を払わなければならない」と告げられていた。

 

その後、4人はソーシャルメディアを通じて家族に助けを求める連絡をした。

 

ある少年の母親であるマイさんは「息子がカンボジアに売られたと知って倒れそうになった。息子の友人家族と連絡を取り合って警察に届け出た。必死に家に連れて帰る方法を探した」と話す。

 

最終的に4家族の父親2人であるトゥアンさんとランさんがカンボジアに行って4人の子どもたちを連れ帰ることにした。ランさんにはカンボジアで働いている知人がいたので、その人物に助けを求めた。

 

4月21日、2人は飛行機でホーチミン市に向かい、車でカンボジアに移動した。その後、ランさんの知人が運転する車で2人はヨンユアンカジノに到着し、トゥアンさんはカジノ支配人に身代金を支払うと申し出た。

 

トゥアンさんは銀行振り込みで2400ドル(約33万2520円)を支払い、4月22日に息子を迎えにいった。警備員からはゲートから遠くに立つように命じられ、「近づいたら射殺する」と脅された。

 

数分後に建物からトゥアンさんの息子が現れ、トゥアンさんは息子を車に乗せると急いでカジノを後にした。

 

他の3人はカジノの支配人に働き続けるように説得されており、トゥアンさんの息子と一緒に救出されることはなかった。

 

その後、ヨンユアンカジノの従業員数人が逃げ出そうとしたため、支配人は多くの従業員を同州内のゴールデンフェニックスカジノという別のカジノに移動させた。

 

ゴールデンフェニックスカジノに移動した後、残りの3人も再び帰国を希望したが、同カジノはヨンユアンカジノから3人を買い取ったとして、1人当たり5000ドル(約69万2740円)の身代金を要求した。

 

被害者家族らが何とかして身代金をかき集めてカジノ支配人に支払うと、残りの3人も無事解放された。トゥアンさんとランさんは子どもたちを連れて4月25日にベトナムに帰国した。

 

帰国した被害者らは地元警察に報告し、アイン容疑者を告訴したが、同容疑者はクアンニン省で覚醒剤400グラムとエクスタシー1000錠を所持していたとして既に逮捕されていた。

 

公安省のコン・ゴック・ワイン大佐によると、数千人のベトナム人が「搾取されるために」カンボジアで人身売買被害に遭っている可能性があり、救出が非常に困難な状況である。人身売買被害に遭った労働者のほとんどは「高賃金で簡単な仕事」を約束され、カジノや生産施設に連れて行かれた後に奴隷の様な扱いを受けている。

 

今月、ゴールデン・フェニックスカジノから42人のベトナム人が川を泳いでアンザン省への脱出を試みる事件が発生した。40人は脱出に成功したが、1人がカジノ側に奪還され、16歳の少年1人が溺死した。

 

今年上半期、ベトナムの警察はカンボジア当局と協力し、カンボジアで人身売買被害に遭っているベトナム人250人以上を救出することに成功している。

 

 

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