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ベトナムの犬肉市場、文化の変化とともに苦境へ

2023年08月21日(月)13時26分 公開
ベトナムの犬肉市場、文化の変化とともに苦境へ

<写真:VnExpress>

 

ハノイ市ロンビエン区にある犬肉店経営者のグエン・ヴァン・トゥン氏によると、開店当初は毎日5〜6匹、時には7匹の犬を販売していたが、現在では1匹も売れない日が増えている。

 

同氏の店は近隣界隈で現存する2軒の犬肉屋台のうちの1軒である。もう1軒の店も同様の状況で、2人のオーナーは「店を閉めなければならないかもしれない」と頻繁に話し合っているという。

 

トゥン氏によれば、店の繁盛期には妻の他に2人の従業員を雇い、一日中忙しく、休む暇もなかった。しかし、2〜3年前から売り上げが落ち始め、その傾向は現在も続いている。

 

パンデミックが起こって以来、利益はまったく出ず、店の経済的損失を補填するために私財を使わざるを得ない状況であり、同氏は鶏肉や鍋といった他のメニューに切り替えるか、あるいは店を家主に返して故郷に戻ることも考えているという。

 

かつて犬肉料理が有名であった地域では、閉店の波が犬肉コミュニティを襲っている。同市ハドン区のレチョンタン(Le Trong Tan)通り、ホアンマイ区のタムチン(Tam Trinh)通り、タイホー区のニャットタン(Nhat Tan)通りなどがその例である。

 

ハノイ市動物衛生局は2018年、当局が奨励を始めた後、同市における犬猫肉店の数が約1100から約800に減少したと報告している。ベトナム畜産協会の副会長であるグエン・ゴック・ソン氏によると、現在はさらに減少している可能性が高い。

 

ホーチミン市1区のコンクイン(Cong Quynh)通り189番路地も、かつては「犬肉天国」として知られ、10軒以上の店が近所で様々な種類の犬肉を販売していたが、現在は3軒に減少している。

 

同地域の「チュオン」という店に勤めていたファム・メイ氏は、3年ほど前から犬肉の商売を始めたが、顧客の数は減少する一方である。同氏によると、近隣店の大半が経営不振で閉店せざるを得なかったという。

 

同市のファム・ヴァン・ハイ市場は犬肉の卸売市場で賑わっていたが、今では「片手で数えられるほど」の客数しかいない。

 

地元メディアの記者は最近、同界隈で犬肉を販売する現役の犬肉屋を2軒だけ見つけた。そのうちの一軒のオーナーであるA氏は、犬肉食を敬遠する人が増加していると指摘する。

 

A氏の店を訪れていた長年の常連客が再度来店することは減少した。犬肉はヘルシーで高タンパクな嗜好品、あるいは単なる酒の肴と考えられていたが、現在は犬肉の販売や消費は残酷であると言われている。

 

同氏は地元メディアに対し「利益が減ったので、犬肉を売りたくなくなった。おそらく数ヶ月以内に他のものを売ることに切り替える」と語った。

 

実際に犬食いのホットスポットであったA氏の店舗近隣は大半がコーヒーショップとなっている。かつて有名であった犬食レストランの向かいにある文房具店のオーナー、ゴー・ヴァン・ルック氏によると、オーナーの子供たちは誰も犬肉屋を継ぎたがらなかったという。

 

ルック氏も以前は犬を食べていたが、近所の食肉処理場が不衛生で残酷な扱いをするのを見て犬食の習慣をやめた。屠殺場が病気の犬から肉を加工する光景を何度も見て、自身が屠殺場から買った肉も病気の犬から作られたものなのではないかと怖くなったという。

 

世界保健機関(WHO)は、犬肉がコレラや狂犬病のような病気や、エキノコックスのような寄生虫の発生源であり、これらの寄生虫はその料理を食べた人に移る可能性があると警告している。

 

ジャーナリズム・コミュニケーション・アカデミーのグエン・アン・ホン教授によれば、マスメディアは犬を食べる人々にこの危険性を認識させ、習慣を変える動機付けをした。これはベトナム人の犬食離れの4大原因の1つであるという。

 

しかし、豚肉、鶏肉、牛肉は、これらの肉に関連する病気が広く知られるようになった後も、ベトナムで広く消費されている。

 

ホン教授はベトナム人が犬だけを食べたくなくなった他の理由として、健康的で衛生的な食材の選択、ペットを食材ではなく家族の一員としての認識、単純に犬肉食をしないというトレンドの3点を挙げた。

 

トゥン氏もこれらの説明に同意する。最近のVnExpressの調査に参加した約1万8000人の回答者のうち8000人以上が、同じように犬肉を食べる習慣をやめる決断をしたと報告した。世界的な動物愛護団体であるFour Pawsの「2021年のベトナムにおける犬猫肉の消費に関する報告書」によると、調査対象となったベトナム人の88%が犬猫肉の密売を禁止することを支持している。

 

この調査結果はベトナムの犬肉ビジネスにとってさらに暗い未来が待っていることを示唆する。ファム・ヴァン・ハイ市場にある犬肉店のオーナーは「この仕事は誰からも嫌われるし、もう嫌になってしまった。今は1日に数キロの肉を売るだけのわずかな利益で何とかやっている」と語る。

 

トゥン氏は犬肉販売・消費の欠点が長所を上回ったと指摘する。同氏の子どもたちは実家が犬肉販売店であることを理由にいじめられたことがあり、同氏に犬肉販売を辞めるようにお願いしたことがあるという。同氏は「子供たちの言葉を聞いて悲しくなった。もう商売を続けたくなくなった」と語っている。

 

 

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