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伝統の北部・革新の南部、フォーに現れる文化の違い
<写真:laodong.vn>
ベトナムを代表する国民食「フォー」は、その地域によって味わいやスタイルに大きな違いが見られる。
ミシュランガイドに認定された複数のレストランの料理長たちは、これらの違いが歴史的背景、文化的要素、そして地域ごとの嗜好に根ざしていると分析する。
北部・ハノイにおける伝統的なフォーは、澄み切ったスープとシンプルな具材構成を特徴とし、ネギと肉のみを添えるのが一般的である。
香草や黒豆ソースといった追加調味料は好まれず、素材本来の味を引き立てる控えめな味付けが重視されている。
これに対し、南部・ホーチミンのフォーは、甘味を帯びた濃い色のスープが用いられ、もやしやバジル、黒豆ソース、甘辛チリソースなどを添えて食べるスタイルが主流である。
より複雑で香り高い仕上がりが特徴であり、自由な味のカスタマイズが楽しまれている。
こうしたスタイルの違いは、1954年以降の北部から南部への移住により形成されたものである。
北部から持ち込まれた伝統的なフォーは、南部特有の豊富な香草文化や甘味を好む食文化に適応する形で変容を遂げた。
特にホーチミンは文化的な多様性に富み、調味料の選択肢も多様であることが、南部スタイルの発展に拍車をかけた。
フォーの起源については諸説存在するが、一説ではフランス統治時代における牛肉消費の拡大が契機となった。
この説では中国南部の米麺文化とフランス料理の要素、そしてベトナム固有の食文化が融合する形で誕生したとされる。
ミシュランガイド2023年版においては、ハノイの伝統的なフォー専門店多数がビブグルマンを受賞し、そのオリジナルな味わいが高く評価された。
一方で、ホーチミン市では一杯100ドル(約1万5340円)のトリュフ入りフォーや、フォーがモチーフのカクテル「Phojito(フォージート)」など、独創性を前面に出した革新的な店が注目を集めている。
伝統を重んじる北部と、革新を追求する南部、異なるスタイルを持ちながらも、いずれもフォーという料理を通じて、ベトナムの食文化の奥深さと多様性を世界に伝えている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。