ハノイは空気が悪い!? 大気汚染の影響と身を守る方法とは?

ハノイは空気が悪い!? 大気汚染の影響と身を守る方法とは?

ベトナムのハノイで生活をしている方や、お子供様がいらっしゃる方が一度は必ず「空気の悪さ」を心配することがありますよね。

 

  • 大気汚染が私たちにどの様な影響をもたらすのか
  • どう気をつけていけば良いのか

 

気になるポイントをハノイ市の日系病院「さくらクリニック」の久保医師に解説していただきました。

ハノイの大気汚染と体への影響

「空気の悪さ」つまり「大気汚染」が気管支喘息をはじめとする様々な呼吸器疾患やアレルギー性鼻炎などの耳鼻科的疾患と関係があることが多くのデータから明らかになっています。

実際に大気汚染と死亡率が関係しているというデータも存在しており、そのためにも大気汚染をなくそうと世界中の政治家・環境活動家が声を上げているわけです。

 

「私たち日本人がハノイに来ると将来的にどのような悪影響があるのか」、気になるところだと思います。

もちろん前述のように悪影響があるとは言えるのですが、将来的にどの程度の悪影響があるのかと言われると、正直「わからない」としか申し上げることができません。

 

どういうことかと言いますと、日本にも大気汚染はあります。

加えて我が国だけの問題ではなく、中国からのPM2.5の飛来もありますし、都市部・郊外・工業地帯・車通りの多い大通り沿い…どこ住んでいるか否かでも大気汚染の影響を受ける個人差が激しいわけです。

これに加えて普段からのマスクの着用や、タバコを吸うか否か(同居する家族含め)、その方の職業、その方の既往歴はどんなものがあるかなど、実に様々な要因で病気というのは生まれ、悪化していきます。

 

したがって、闇雲に「ハノイに来たら将来呼吸機能が衰えて早死にする」というような極論はナンセンスです。

とはいえ、一般的には「大気汚染がひどい場所で生活するほうが、呼吸器・耳鼻科に悪い影響を与える可能性が高い」という認識を持っていただくことは良いと思います。

でもなぜか、ぜんそくが少ない!?

しかし、空気が悪いと言われるハノイで診療をしていて「想像以上に気管支喘息の方が少ない」ということに気づきました。

皆様も想像しやすいでしょうし、私たち医師としても空気が悪ければぜんそくが増えそうな気がしましたが、東京で救急や内科医をしていればよく拝見する「ぜんそくの発作」というものにめったに出会いません。

 

最初は「もともとぜんそく持ちの患者さんは嫌がってハノイに来てない」からなのかと思いましたが、そうではないようで不思議と「気管支をやられるよりのどをやられる人のほうが多く感じる」のです。

もちろん、ハノイでぜんそくが発症するお子さんがいないわけではありません。

大人であっても気管支喘息が突然発症することだってあり得ないわけではありません。

 

いろいろと文献を探したのですが、のどのほうが気管支よりもやられやすい、などといった感覚的なことについてまとめられている論文はありませんでした。

「のどの方がやられやすいのかな」と感じているのは、我々のバイアス(思い込み)なのかもしれませんし、定かではありません。

 

ただ、当院にいらっしゃる患者さんたちに限れば、空気の悪さでトラブルが起きているのは、のどや鼻水といった訴えのほうが多いです。

喘息もアレルギーの一種なのですが、これはなぜか本当によくわかりません。

 

これらののどや鼻水といった症状は、空気中に存在するアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)によってアレルギー反応が起きることで生じている症状も含まれている可能性があります。

つまり、大気汚染によってアレルギー性鼻炎などのアレルギーが生じている、そういった可能性もあるわけです。

アレルギーとは

アレルギーというのは、皆様が思っているより、はるかにたくさんの原因があり、特定しにくいという事実があります。

この世に存在するすべての物質はアレルゲンになりえます。

 

例えば、「点滴の管のアレルギー」の方を長いこと拝見していたことがあります。

その方は注射(金属・プラスチック)も大丈夫だし、ペットボトルも含めたプラスチック製品でアレルギーになったこともないような方だったのですが、なぜか点滴の管が皮膚に接すると、その翌日には必ずその部位だけがミミズばれになるという状況でした。

おそらく点滴の管を製造する過程で含まれている物質が関係していたのでしょうが、いつもミミズばれになってしまうので、点滴の管を使用するときは皮膚に接しないように看護師たちがいつもケアしてくれていました。

 

このように、アレルゲンはたくさんの物質があるのですが、アレルゲンとして有名なものは大体決まっています。

日本ではもちろんスギ・ヒノキが有名ですし、ハウスダストやダニに対するアレルギーは非常に多いです。

 

非常にポピュラーな原因物質は採血でその反応の有無を調べることも可能です。

アレルギー症状がある場合、立派な病気なわけで我々から「検査して調べてはどうか?」 と提案することもよくあります。

もしアレルギー症状でお困りの場合は、原因検索のためにご相談していただくのがよいかもしれません。

ハウスダストやダニのアレルギーが多いのは先進諸国

なお、先進諸国ではハウスダストやダニなどのアレルギー性疾患が多く、途上国ではその数が少ないことは知られています。

その理由として建物の構造が向上し、家庭の断熱性・遮断性(という言葉で日本語としてあっているのかわかりませんが)が増したために、屋内のアレルゲン物質すなわちハウスダストやダニ・カビなどによるアレルギーが増加することがわかっているそうです。

 

日本のアレルギーは花粉症が一般的ですがハウスダストやダニ・カビに対するアレルギーも増えているといわれているのはこういった背景もあるようです。

近年はアトピー性皮膚炎を含めたアレルギー性疾患の治療や対応も劇的に改善しており、アレルギーに対する医療は大きく進歩していますが、それでもアレルギーの世界はまだまだ分からないことでいっぱいなのも事実です。

気になる場合は、一度病院でご相談ください。

大気汚染から身を守るには・・・

さて、ハノイの空気の汚さは体に良くないといわれても、生活している以上ある程度は大気汚染と立ち向かっていかないといけません。

空気の悪い日には外出をしない、マスクを着用する、布団や洗濯物を外に干さない、窓を閉める、空気清浄機を使用する、などが対策としてよく上げられますが、やはりどれもこれも「毎日ずっとすることはできない」ものが多いと思います。

特にお子さんが小さかったり、お仕事をされていたりする場合、これらを理想的に行うといったことはほぼ不可能でしょう。

 

ましてや、一般的なマスクや空気清浄機によって空気がどれほどきれいになったのか、我々人間の呼吸器へどのくらい効果があるのかというのはほとんどデータがないような状態です。

様々な研究結果や予測式などは存在しますが、我々臨床現場の医者から言わせれば「ほとんどデータが存在しないといっていいほど、現実と理想がかけ離れているな」と思うことが多々あります。

 

したがって、我々ハノイに住んでいる者としては、

  • 空気が特に悪い日は出かけるのを控える
  • 空気の入れ替えも最小限にとどめる
  • 天気の悪い日は洗濯には乾燥機を利用する
  • 咳や鼻水などの症状があれば、アレルギー症状かもしれないので医者に相談する
  • 喘息などの呼吸器疾患が発症する可能性もあるので、息苦しければ無理をせず早く医者の診察を受ける

といったことを心構えとして持っていただき、そのうえでマスクをする(COVID対策にもなりますので…)、空気清浄機の使用も検討するといった対策を取るのが良いのかもしれません。

まとめ

ハノイは天気も悪く、空気も悪いために気が滅入ってしまうこともあると思います。

特に小さなお子さんがいらっしゃるご家庭は気になることも多いでしょう。

それぞれの対策に絶対的な正解があるわけでもなく、各ご家庭の環境や背景によっても対策は大きく異なると思いますので、可能な範囲での対策を心がけるのが良いのかもしれません。

もし咳がある・鼻水があるなど含めて、健康に気になることがあれば遠慮なくご相談ください。

情報提供:さくらクリニック

さくらクリニックは2014年に開業したハノイ初の日系クリニックです。タイ湖に面した閑静な住宅街にあり、ハノイの駐在員や家族、旅行中の日本人の方向けに日本水準の最先端医療サービスを提供しています。予約から支払いまで全て日本語対応が可能なほか、キャッシュレスでの受診も可能です。さくらクリニックでは、今回お伝えしたクラミジアの検査・治療も行っています。

 


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