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ベトナム〜アメリカ直行便、運航開始に向けた課題とは
ベトナムの大手不動産デベロッパーFLCグループ傘下のバンブー航空が9月からベトナム〜アメリカを結ぶ直行便の運航を開始すると発表したことを受け、ベトナムの航空専門家が発着枠の取得は米国直行便就航に向けた数ある障壁の最初の1つでしかないと指摘した。
5月、バンブー航空 (QH:Bamboo Airways)は9月1日からホーチミン市とサンフランシスコ、ロサンゼルスを結ぶ定期直行便を運航するための各空港における発着枠を取得したと発表していた。
バンブー航空は7月からチャーター便の運航を開始し、9月からは定期便として運航を開始する計画。
両路線ともにデイリー運航で、サンフランシスコ到着時間は午前10時、出発時刻は午後13時となる予定。
一方、ロサンゼルス線は到着時間は午前9時30分、出発時間は午後12時30分となる。時間はいずれも現地時間。
また、使用される機材は同社の保有する最新鋭機であるボーイングB787-9型機ドリームライナーだ。
バンブー航空は現在、運航開始に向けて、パイロットや乗務員のトレーニング、セキュリティに関する規制整備などの最終準備を進めているという。
新型コロナ前から、北米から東南アジアへの人の流れが盛んになっており、ベトナムとアメリカを往来する人も増加していた。
そのため、両国を結ぶ直行便の需要は高く、これまで幾度となく、ベトナム〜アメリカ間の直行便の計画は取り立たされてきた。
事実、過去10年以上にわたり、両国間で直行便開設の協議は進められてきたという。
しかし、発着枠の取得以外に解決しなければならない課題が多く、直行便の実現はできていない。
ベトナムの航空専門家Nguyen Thien Tong氏は、発着枠の取得以外の課題として、ベトナムの航空会社がアメリカ当局から取得しなければならない安全性に関する様々な許可を挙げている。
これまで、国内で最も運航年数の長いベトナム航空がアメリカ直行便を運航する可能性が高いと見られてきたが、同社ですら両国を結ぶ長距離路線を運航する能力を証明するために多くの課題を抱えているという。
一方、バンブー航空は運航開始からわずか2年で、課題はベトナム航空より遥かに多いと指摘している。
昨年9月、ベトナム航空はベトナムの航空会社として初めて、アメリカ運輸省からアメリカへの直行便の乗り入れに関する許可を取得していた。
当初、ボーイングB787型機ドリームライナーを使用しての直行便運航許可を取得していたが、今年4月には、ベトナム民間航空当局から、エアバスA350-900型機を使用しての直行便運航許可を取得していた。
昨年には、ベトナム航空はコロナ禍で足止めになったベトナム人の救援などで、ベトナムとアメリカ間を結ぶチャーター便を20便以上運航した。
しかし、定期便の運航となると、アメリカの連邦航空局(FAA)や運輸保安庁(TSA)、税関国境警備局(CBP)から様々な許可の取得が必要になるという。
中でも運輸保安庁からの許可の取得が最も障壁が高いとされている。
運輸保安庁は専門家を派遣して、ベトナム国内の空港の調査を行うという。
さらに、ベトナム民間航空当局は、ベトナム航空とバンブー航空の保有しているエアバスA350-900型機とボーイングB787-9型機では、定員の100%となる約300人を乗せた状態でのアメリカへの直行便の運航は不可能だと指摘している。
当局はベトナムとアメリカを結ぶ直行便の運航には、ボーイングB777MAXやエアバスA350-1000型機が必要だとされているが、ベトナム国内でこれらの機材を保有している航空会社は存在しない。
技術的な問題のほか、航空専門家のTong氏はベトナム・アメリカ間の直行便の収益性に疑問を投げかけている。
ベトナム航空CEOのLe Hong Ha氏は以前、同社がアメリカに直行便を運航した場合、運航開始から最初の5年は年間3000万ドル〜5000万ドルの損失が生まれるとしていた。
一方で、バンブー航空のTrinh Van Quyet会長は、往復航空券価格を1300ドルに設定し、アメリカへの直行便を運航した場合、月間34万6700ドルの収益を上げることができるとの試算を示した。
しかし、この数字の正確性には疑問が残るとTong氏は指摘。
過去ユナイテッド航空が香港を経由したベトナム直行便を運航したこともあるが、収益性の低さから撤退しているという。
現在、ベトナムとアメリカを結ぶ直行便はなく、日本や香港、韓国、台湾などを経由するルートが一般的に利用されている。
乗り継ぎを含めて、所要時間は18時間〜21時間程度だ。
直行便が就航すれば所要時間は15時間〜17時間に短縮され、利便性が高まるという。
新型コロナウイルスによる入国制限などで、ベトナム・アメリカ間の直行便就航の実現性はまだ不透明だ。
しかし、2019年の訪越アメリカ人は68万7226人となり、アメリカ在住ベトナム系移民は210万人いるとされていることから、直行便への需要と期待は高い。
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