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ベトナム南部の不動産M&Aが停滞、高額提示が取引の障壁に

<写真:vnbusiness.vn>
ベトナム南部において不動産のM&A(企業の合併・買収)案件は増加傾向にあるが、売却希望価格と市場価格との乖離が大きく、多くの案件が不成立に終わっている。価格の過大提示が市場の足かせとなっている実態が浮き彫りとなった。
自動車販売大手のハサコ(Haxaco)は、ホーチミン市内に保有する約6280㎡の土地の競売を中止した。開始価格は1兆1300億ドン(約63億3026万円)に設定されたが、入札者が現れず、8月5日に予定されていた競売は取りやめとなった。この土地は2022年と2024年に合計5420億ドン(約30億3628万円)で取得されたものであり、売却が実現すれば約6000億ドン(約33億6120万円)の利益が見込まれていた。
ホーチミン市近郊でも同様の事例が続出している。タイニン省では約2149haの都市開発用地が27兆ドン(約1512億5400万円)で売り出されているが、補償費や土地使用料を含まない価格にもかかわらず、買い手がついていない。周辺地域においても、36haの土地が6兆6800億ドン(約374億2136万円)で提示されているが、こちらも成約には至っていない。
さらに、ビンズオン省では1haの複合開発用地が9000億ドン(約50億4180万円)超で売却提示されている。建設費や土地使用料を含めると、分譲価格は1㎡あたり8000万ドン(約44万8160円)に達する見込みであり、採算性に対する懸念が広がっている。
ホーチミン市に本社を構えるある不動産企業によれば、2025年前半に10件近くのプロジェクトについて買収を検討したが、価格が高すぎたためすべて見送られたという。売り手側が、銀行からの借入金に対する利子や長期保有に伴うコストを価格に上乗せしていることが、価格高騰の一因とされている。
調査会社DKRA Groupは、M&A市場の取引数が前年同期比で20〜30%増加していると指摘する一方で、法的手続きが完了した優良物件は高額であり、実際に買収できるのは外資系企業や資本力を有する大手企業に限られると分析している。
また、不動産コンサルティング大手サヴィルズ・ホーチミンは、地価の高さに加えて法的リスクや金融コストも、M&A案件の成立を妨げる要因であると述べる。企業側は現在、市場の動向や政府の政策変更を注視しつつ、慎重に土地取得を進めている状況である。
プードン・グループも、土地使用料がプロジェクトの収益性に与える影響の大きさを強調している。かつては安定していた土地使用料の評価が現在では不透明となっており、採算性を見極める上で極めて重要な要素となっている。
今後も不動産M&A市場の活性化は続くと見られるが、法的整備の状況、資産の実質価値、そして市場が受け入れ可能な価格帯といった要因が、M&Aの成否を大きく左右する見通しである。市場の二極化が進む中、価格と吸収力のバランスが、今後の取引を左右する決定的な要素となる。
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