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「中所得国の罠」脱却へ、ベトナム経済に残された時間は僅か

〈写真:Vietnam.vn〉
ベトナムは2045年までに高所得国への転換を目指しているが、その実現には「中所得国の罠」を乗り越える必要がある。この罠とは、発展途上国が一定の経済成長を遂げた後、低賃金や資源依存による成長の限界に直面し、先進国のような高度な技術や産業に移行できず、長期にわたって経済が停滞する状況を指す。
世界銀行(WB)によれば、現在世界には104の中所得国が存在するが、その多くは何十年にもわたりこの罠から脱出できずにいる。
実際、1960年代に中所得国となった101カ国のうち、2008年までに高所得国へと移行できたのはわずか13カ国に過ぎない。これらの国の多くは、石油資源の豊富さやEU加盟といった特殊な条件を活かして脱却に成功したにすぎない。
成功例として挙げられるのが韓国や台湾である。これらの国々は製造業を基盤とし、外国からの技術吸収と独自技術の開発を進め、世界的な産業競争力を獲得した。
一方で、マレーシアやタイは外資への依存度が高く、依然として中所得国の域を抜け出せずにいる。
このような状況の中、ベトナムは2026年にも世界銀行の定義する「中所得上位国」への到達が確実視されている。2025年7月時点の統計によれば、同年の一人当たり国民総所得(GNI)は4490ドル(約66万340円)であり、上位国の基準である4496ドル(約66万1350円)に迫る水準となっている。
かつてベトナムは1980年代後半において世界でも最貧国の1つとされていたが、1986年のドイモイ(刷新)政策以降、急速な経済成長を遂げてきた。2009年には中所得国入りを果たし、現在では「次の奇跡」を起こす有力な候補として国際社会から注目を集めている。
しかし、過去の事例が示すように、高所得国への転換には政府の戦略的な介入が不可欠である。
たとえば台湾は1980年代に「シリコンバレー」モデルを模倣し、新竹サイエンスパークを設立した。産学官の連携を通じて半導体産業を育成し、世界最大のファウンドリ企業であるTSMCを擁する技術大国へと成長した。
ベトナムにおいても、現在の産業構造からの脱却、高度人材の育成、そして技術革新への積極的な投資が急務である。成長の余地は依然として存在するが、時間的猶予は限られており、国家の未来は今後数年間における政策判断にかかっている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。