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ベトナムラップの下品・過激な歌詞、その理由と背景
<写真:tienphong.vn>
近年、急速な発展を遂げたベトナムのラップ音楽界において、一部楽曲に見られる過激な表現や不適切な歌詞が、社会問題として注目されている。
麻薬の使用、性的描写、暴言などを含む作品が少なからず存在し、当局や市民からは懸念の声が上がっている。
2021年以降、人気番組『Rap Việt』や『King of Rap』の影響により、ラップは主流音楽の一翼を担う存在へと成長した。
一方で、歌詞の言葉遣いや表現内容に対する批判も強まっており、10月にはホーチミン市警察および市党委員会が、一部アーティストに対して公式な警告を発している。
ラップは1970年代のアメリカ・ブロンクス地区において、貧困層や黒人コミュニティの社会的主張の手段として発展してきた経緯を持つ。
ベトナムでは2000年代初頭に欧米から流入し、当初はアンダーグラウンドで活動する小規模なコミュニティに限られていたが、2006年頃から歌詞の内容が多様化し、攻撃的な表現や性的要素が顕著になっていった。
こうした傾向の背景には、欧米スタイルの模倣が選別なく行われている実態がある。
若手アーティストの中には、リリックにおける自由を「何を言っても許される」と誤解し、公序良俗に反する表現を用いる例も見られる。
2021年の研究によれば、ラップは他の音楽ジャンルと比較して卑語の使用頻度が最も高いとされ、それがジャンル固有の個性として受け入れられる傾向もある。
しかし、主流文化の一部となった今、より高い倫理基準が求められる状況にある。
このような認識の変化を受け、番組『Rap Việt』の最新シーズンでは「卑俗語および18禁表現の使用禁止」といった新たな基準が設けられた。
SNSの発達もまた、過激なコンテンツの拡散を加速させている。
批判を受けて削除に至るケースもあるが、実質的な制裁は限定的であり、違反に対する処罰の強化を求める声は根強い。
罰金処分が科された事例も存在するが、全体としてはアーティストの自主規制に依存する現状が続いている。
一方で、近年はベトナムの伝統文化を取り入れたラップ作品も増加しており、Đen VâuやDouble2Tといったアーティストは、社会的メッセージ性の強い楽曲で幅広い支持を集めている。
文化省もこのような方向性を支援しており、創造の自由を尊重する一方で、表現が社会規範や倫理観に則ることを求めている。
今後、ベトナムのラップはアンダーグラウンドからメインストリームへと移行する過程において、より成熟した言語表現と社会的責任が問われる時代を迎えている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。