おすすめのプロモーション
中国・工業・ガソリン⋯ハノイ大気汚染の原因
<写真:znews.vn>
ベトナムの首都ハノイは、過去10年以上にわたり大気汚染対策を講じてきたが、その効果は限定的であり、現在も世界で最も空気の質が悪い都市の1つとされている。
2024年にはPM2.5の年間平均濃度が国際的な基準値を大きく上回り、世界で7番目に大気汚染が深刻な都市として位置付けられた。
他国の主要都市が徐々に改善の兆しを見せる中、ハノイの状況は逆行しており、その異常性が際立っている。
ハノイの大気汚染の主な原因は、地域内外からの多様かつ複雑な発生源に起因している。
第一に、中国本土などから飛来する越境汚染が挙げられる。
第二に、市内の交通・工業活動、さらには家庭で使用される燃料の燃焼による排出が深刻な影響を及ぼしている。
第三に、ハノイ特有の地形や気象条件が、汚染物質の拡散を妨げている点も見逃せない。
特に冬季には、寒冷な気団の影響で大気の対流が弱まり、汚染物質が地表付近に滞留しやすくなる。
このため、毎年10月から翌年2月にかけて、大気の質が著しく悪化する傾向にある。
都市の拡張に伴い、かつての農地が都市化される中で、工場や交通量が郊外に集中し、汚染源の分布が広域化している点も問題である。
2024年時点で、ハノイ市内では約110万台の自動車と約690万台のバイクが稼働しており、その多くが老朽化していると報告されている。
さらに、周辺地域に点在するセメント工場や火力発電所、伝統的な工芸村も、継続的に大気汚染物質を排出しており、その影響は無視できない。
一方で、汚染物質の排出源の分類や、それぞれの寄与率に関する科学的研究は未だに統一されておらず、政策立案の基盤として脆弱であるとの指摘がなされている。
国内外の専門家は、国レベルでの包括的な排出インベントリの整備を急ぐべきであると訴えており、広域的かつ部門横断的な対策が求められている。
このような状況の中、2025年11月にはベトナム政府が「2026~2030年国家空気質改善行動計画」を承認し、2030年までに都市部のPM2.5濃度を大幅に削減する方針を打ち出した。
しかし、実効性のある施策を展開するためには、科学的データの蓄積と、政権交代などに左右されない長期的な政策の一貫性が不可欠である。
中国では、交通と石炭燃焼を主要な汚染源と見なして集中的に対策を講じ、大気の質を大幅に改善させた例がある。
こうした事例は、ハノイにとっても参考となり得る。
専門家らは、まず高濃度汚染の主要因を科学的に特定し、費用対効果に基づいた政策を優先的に導入すべきであると提言している。
ハノイの大気汚染問題の克服は、ベトナム全体の持続可能な都市発展の行方を占う試金石である。
その成否は、今後の環境政策の在り方に大きな影響を与えるであろう。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。