ベトナムのデング熱|症状・予防・感染時の対処・ワクチンを解説
目次
ベトナムでは、デング熱は都市部を含めて注意したい感染症のひとつです。感染は一年を通して起こり、雨季など蚊が増えやすい時期には特に注意が必要です。
デング熱には特効薬がなく、予防の基本は蚊に刺されないことです。また、感染した場合は熱が下がり始めてから重症化するケースもあるため、症状の変化を見ながら適切に受診することが大切です。
この記事では、ベトナムの最新の流行状況をはじめ、症状・潜伏期間・重症化のサイン・感染時の対処法・予防策・デング熱ワクチンQdengaについて解説します。
この記事のポイント
- ベトナムではデング熱の感染リスクが一年を通してある
- 2026年1〜8月には全国で約7万8300人の患者が報告されている
- 発熱が下がり始める時期にも重症化のサインに注意する
- デング熱が疑われる時はイブプロフェンやアスピリンなどのNSAIDsを避ける
- 予防の基本は日中を含めた蚊対策と、蚊の発生源となる水たまりを減らすこと
- ベトナムではQdengaの接種について医療機関へ相談できる
結論|ベトナムでは日常的な蚊対策が重要
ベトナムでデング熱の感染リスクを下げるために最も重要なのは、蚊に刺されない対策を日常的に続けることです。
米国CDCは、ベトナムではデング熱が一年を通して発生しており、夏季の雨季に感染が増えやすいとしています。そのため、「雨季だけ対策すればよい」「地方やジャングルへ行かなければ大丈夫」という病気ではありません。
| 対策 | 具体例 |
|---|---|
| 虫よけ | DEETやイカリジンなどの有効成分を含む虫よけを、製品表示に従って使用する |
| 服装 | 長袖・長ズボンなどで肌の露出を減らす |
| 室内対策 | 網戸、蚊帳、蚊取り製品、エアコンなどを活用する |
| 発生源対策 | 植木鉢の受け皿、バケツ、空き容器などに水をためない |
| 時間帯 | デング熱を媒介する蚊は日中にも活動するため、昼間も対策する |
発熱時の薬に注意
デング熱が疑われる時は、アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンなどのNSAIDsを自己判断で服用しないでください。出血リスクを高める可能性があります。解熱・鎮痛にはアセトアミノフェン(パラセタモール)が用いられることがありますが、服用については医師や薬剤師へ相談しましょう。
2026年のベトナムのデング熱流行状況
ベトナムではデング熱が継続的に発生しています。
2026年9月確認時点で公表されているベトナム国家統計局の2026年1〜8月集計では、全国で約7万8300人のデング熱患者と13人の死亡が報告されています。
また、CDCのベトナム渡航情報では、デング熱はベトナムの常在感染症で、雨季に増えやすい一方、感染自体は一年を通して起こるとされています。
都市部でも注意
デング熱は農村部や山間部だけの病気ではありません。デング熱を媒介する蚊は人が生活する都市部にも生息するため、ホーチミンやハノイ、ダナンなどに滞在する場合も蚊対策が必要です。
デング熱とは?感染経路・潜伏期間・症状

デング熱は、デングウイルスを持つネッタイシマカ(Aedes aegypti)などの蚊に刺されることで感染するウイルス性疾患です。
通常の会話や食事、同じ部屋で過ごすといった日常的な接触によって、人から人へ直接感染する病気ではありません。感染者の血液を吸った蚊が、その後ほかの人を刺すことで感染が広がります。
WHOによると、症状が出る場合は感染から4〜10日程度で発症することが多く、主に次のような症状がみられます。
- 突然の高熱
- 強い頭痛
- 目の奥の痛み
- 筋肉痛・関節痛
- 吐き気・嘔吐
- 発疹
- 強い倦怠感
症状には個人差があり、感染しても無症状や軽症で終わるケースもあります。一方で、一部では重症デングへ進行することがあります。
ベトナム滞在中だけでなく、帰国後に発熱する可能性もあります。帰国後に高熱や強い倦怠感などが出た場合は、医療機関でベトナムへの渡航・滞在歴を伝えてください。
一度感染すれば、もうデング熱にはならない?
デングウイルスには複数の血清型があり、一度感染しても別の型に感染する可能性があります。
過去にデング熱へ感染した経験がある人も、引き続き蚊対策が必要です。また、WHOは過去の感染が重症デングのリスク要因のひとつになるとしています。
ベトナムでデング熱に感染する確率は?
「ベトナムへ行くと何%の確率でデング熱に感染するのか」と気になる方もいるかもしれませんが、旅行者や在住者一人ひとりについて一律の感染確率を示すことはできません。
感染リスクは、滞在する地域や季節、その時点の流行状況、滞在期間、周辺の蚊の多さ、虫よけ対策などによって変わります。
患者数の統計はベトナム国内での流行状況を知る参考にはなりますが、「旅行者100人のうち何人が感染する」といった個人の感染確率を示す数字ではありません。感染率を過度に恐れるより、滞在中の蚊対策を徹底することが現実的な予防になります。
重症化のサイン|熱が下がっても油断しない
デング熱の多くは回復に向かいますが、一部では重症化することがあります。
特に注意したいのが、熱が下がり始める時期です。「熱が下がったから治った」と判断した後に、急激に状態が悪化する場合があります。
すぐに医療機関へ相談したい症状
- 強い腹痛・腹部の圧痛
- 繰り返す嘔吐
- 鼻や歯ぐきなどからの出血
- 吐血、血便、黒い便
- 息苦しさ、呼吸が速い
- 強い眠気、ぐったりする、落ち着きがない
- 皮膚が青白い、冷たい
- 強い脱力感や急激な体調悪化
妊娠中の方、乳幼児、高齢者、持病がある方などは、症状が軽く見えても早めに医療機関へ相談してください。
デング熱が疑われる時の診断と対処法
まず医療機関へ相談する
高熱、頭痛、関節痛、発疹などがありデング熱が疑われる場合は、症状だけで自己判断せず医療機関へ相談してください。
デング熱は、インフルエンザやその他の感染症と似た症状を示すことがあります。
検査方法
医療機関では、発症からの日数などに応じてNS1抗原検査、PCRなどの遺伝子検査、抗体検査などが選択されることがあります。また、血小板数やヘマトクリットなどの血液検査を行い、重症化の兆候がないか確認することもあります。
適した検査は発症時期や症状によって異なるため、医師の判断に従いましょう。
水分補給と安静
現在、デング熱に対する特異的な抗ウイルス治療薬はありません。軽症では安静と十分な水分補給などの支持療法が基本になります。
発熱や嘔吐によって脱水になりやすいため、水や経口補水液などを少量ずつこまめに摂取します。水分を飲めない、嘔吐が続く、状態が悪化している場合は自宅で様子を見続けず、受診してください。
解熱鎮痛薬は成分を確認する
WHOとCDCでは、発熱や痛みにアセトアミノフェン(パラセタモール)を使用する一方、出血リスクを高める可能性があるアスピリンやイブプロフェンなどのNSAIDsを避けるよう案内しています。
日本から持参した市販薬や処方薬にもNSAIDsが含まれている場合があります。イブプロフェンやロキソプロフェンなどを自己判断で服用せず、成分が分からない場合は医師または薬剤師へ確認してください。
発熱中も蚊に刺されない
デング熱に感染した人の血液を蚊が吸うと、その蚊を介して周囲の人へ感染が広がる可能性があります。
そのため、自宅療養中も虫よけ、長袖、蚊帳、室内の蚊対策などを行い、患者本人も蚊に刺されないようにすることが大切です。
ベトナムでできるデング熱の予防法
デング熱を予防する基本は、蚊に刺されないことと蚊を増やさないことです。
虫よけを正しく使う
DEETやイカリジンなど、有効成分が確認できる虫よけを製品の使用方法に従って使いましょう。
日焼け止めと虫よけを併用する場合は、一般的には日焼け止めを先に塗り、その後に虫よけを使用します。子どもへ使用する場合は、製品ごとの対象年齢や使用方法を確認してください。
肌の露出を減らす
屋外では長袖・長ズボンなどで肌の露出を減らします。特に足首や足元は蚊に刺されやすいため注意しましょう。
日中も蚊対策をする
デング熱を媒介する蚊は、夜だけでなく日中にも活動します。
昼間の外出、屋外カフェ、公園、学校、オフィス、自宅での昼寝などでも虫よけや蚊帳を利用しましょう。
水がたまる場所を減らす
- 植木鉢の受け皿に水をためない
- バケツや空き容器を屋外に放置しない
- 生活用水をためる容器はふたをする
- ベランダや排水口周辺の水たまりを確認する
- アパートや職場の共用部にも蚊の発生源がないか確認する
雨が降った後は小さな容器にも水がたまりやすいため、自宅周辺を定期的に確認すると安心です。
ベトナムでデング熱ワクチンQdengaは接種できる?
デング熱の予防には、武田薬品工業が開発した4価デング熱ワクチンQdenga(TAK-003)という選択肢があります。
Qdengaはデングウイルスの4つの血清型を対象とした生ワクチンで、基本的には2回接種・3か月間隔で使用されます。
一方で、ワクチンを接種すれば蚊対策が不要になるわけではありません。WHOもデング熱ワクチンを、蚊の対策や適切な治療などと組み合わせた総合的な予防策のひとつとして位置付けています。
WHOの推奨と現地での接種対象は分けて考える
WHOは公衆衛生上の集団接種プログラムとして、デング熱の感染が多い地域における6〜16歳の子どもを中心にTAK-003を推奨しています。一方、実際にベトナムの医療機関で接種できるかどうかは、現地の承認条件や年齢、健康状態などによって判断されます。
成人の在住者や旅行者を含め、接種を検討する場合は、過去のデング熱感染歴、年齢、滞在期間、健康状態などを伝えたうえで医師へ相談しましょう。
妊娠・授乳中の方や免疫機能が低下している方などは接種できない場合があるため、自己判断で接種を決めず医療機関で適応を確認してください。
Qdengaの取り扱いを確認している医療機関
2026年9月時点で、ポステではDYMメディカルセンターとロータスクリニックでQdengaの取り扱いを確認しています。接種対象、予約方法、在庫状況などは変わる可能性があるため、受診前に各医療機関へ確認してください。
デング熱以外も含めて渡航前のワクチンを確認したい方は、ベトナム渡航の予防接種ガイドも参考にしてください。
よくある質問
Q. ベトナムでデング熱に感染する確率はどのくらいですか?
A. 旅行者や在住者について一律に「何%」と示せる公的な感染確率はありません。地域、季節、流行状況、滞在期間、蚊への曝露、予防対策などによってリスクが変わります。患者数だけを個人の感染確率として考えないことが重要です。
Q. ホーチミンやハノイ、ダナンなど都市部でも感染しますか?
A. はい。デング熱は地方だけの病気ではなく、都市部や住宅地でも注意が必要です。滞在エリアにかかわらず、日中を含めて蚊対策を行いましょう。
Q. 熱が下がったら安心してもいいですか?
A. 必ずしも安心とは言えません。デング熱では解熱する頃に重症化の警告症状が現れることがあります。強い腹痛、繰り返す嘔吐、出血、息苦しさ、ぐったりするなどの症状があれば、すぐに医療機関へ相談してください。
Q. 日本から持ってきた解熱鎮痛薬を飲んでもいいですか?
A. 成分を確認せず自己判断で服用するのは避けてください。デング熱が疑われる場合、アスピリンやイブプロフェン、ロキソプロフェンなどのNSAIDsは出血リスクを高める可能性があります。医師や薬剤師へ相談しましょう。
まとめ|蚊対策と重症化サインを知っておこう
ベトナムではデング熱が一年を通して発生しており、雨季など蚊が増える時期には特に注意が必要です。
デング熱には特効薬がないため、まずは虫よけや服装、水たまり対策などで蚊に刺されない環境を作ることが大切です。
発熱、強い頭痛、筋肉痛・関節痛、発疹などがある場合は早めに医療機関へ相談し、デング熱が疑われる時はNSAIDsを自己判断で服用しないようにしてください。
また、熱が下がり始めた後に重症化するケースがあるため、強い腹痛、繰り返す嘔吐、出血、息苦しさ、意識状態の変化などがあれば速やかに受診しましょう。
- 外出時は日中も虫よけを使用する
- 長袖・長ズボンなどで肌の露出を減らす
- 自宅周辺に水がたまる場所を作らない
- 高熱時にNSAIDsを自己判断で服用しない
- 解熱後も重症化のサインに注意する
- Qdengaを検討する場合は医療機関で適応を相談する
デング熱以外の感染症や渡航前の健康対策も確認したい方は、ベトナムで注意すべき感染症と予防対策もあわせて確認してください。
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