ベトナム個人情報漏洩問題の実態、多くの国民が被害に

2022年08月22日(月)09時42分 公開
ベトナム個人情報漏洩問題の実態、多くの国民が被害に

<写真:VnExpress>

 

ベトナムでは国民の3分の2相当の個人情報が流出しており、漏洩した個人情報を利用した詐欺や犯罪が増加傾向にある。

 

ホーチミン市在住の大学生であるミン・フイさんとその家族は、借りてもいないローンの返済を要求する電話に脅かされている。

 

フイさんの携帯電話にはこの1カ月間、「あなたは高い利子でお金を借りている。早く返さないと借金が数千万ドン(1000万ドン=約5万8700円)に膨れ上がる」といった内容の電話が知らない人物から掛かってくる。

 

心当たりのない借金に対して否定をすると、相手からフイさんのIDカード番号、電話番号、メールアドレスといった正確な個人情報、家族の関連情報までもが記載されている契約書の写真が送られてきた。

 

フイさんは過去に消費者金融を利用したことはないため、他サービス利用時に使用した個人情報が流出し、消費者金融で利用されたのではないかと推測する。

 

ベトナムでは個人情報に対する国民の意識が低く、杜撰なデータ管理やセキュリティ対策の不十分さによって何百万人分もの個人情報流出が発生している。一度インターネット上に流出した個人情報を完全に消し去ることは不可能である。

 

北部ビンフック省のドー・フオンさんがインターネットとスマートフォンを知ったのはここ5年ほどのことである。

 

彼女は個人情報が必要なネットサービスはほとんど利用しないが、実店舗での買い物時には店舗が提供する割引サービスを利用するために電話番号や住所、身分証明書の写真を提示することがある。

 

先月、当局を名乗る者から「あなたは違法行為に関与している疑いがある」と見知らぬ番号から電話が掛かってきた。

 

電話口でフルネームとIDカードの番号といった個人情報を正確に伝えられたフオンさんは怖くなり、電話での指示に言われるがままに従った。銀行口座情報を提出しようとした際に詐欺に詳しい親戚が制止に入ったため、実質的な被害は発生しなかった。

 

この2人の事件は、最近頻発している個人情報流出事件の一例である。

 

8月初めに公安省から発表された報告書によると、ベトナム人3分の2以上の氏名、性別、生年月日、住所などの個人情報、IDカード番号、電話番号、銀行口座番号といった個人情報がオンライン上に流出しており、現在のベトナムで最も緊急性の高いサイバーセキュリティ問題の1つとなっている。

 

ベトナムの人々はオンライン上で個人情報を保護することの重要性を認識しておらず、「利便性」を優先して何の疑いもなく自らの個人情報を提供する。ソーシャルメディア上の車やバイクなどの景品を提供する投稿のコメント欄には、何千人もの人が自分の電話番号や住所を書き込んでいる。

 

企業はビジネス目的で顧客の個人情報を収集し、特に厳しい規制を設けずに第三者へのアクセスを許可しているため、個人情報がオンラインで複数の関係者に販売・拡散される可能性がある。

 

また、サービスプロバイダーのセキュリティ対策が不十分であることも個人情報が流出する要因の1つとなっている。

 

サイバーセキュリティ企業CyRadarによると、ベトナム国内の多くのシステムがセキュリティに注意を払っておらず、管理が甘くセキュリティの脆弱性につながっている。

 

近年になってベトナムの大手サービスプロバイダーはセキュリティとユーザデータ保護に多額の投資を行うようになって来ているが、すべての企業が万全の状態という訳ではない。また、特定の企業の従業員が顧客データの売買や流出を行っており、憂慮すべき問題となっている。

 

今年初めに閉鎖されたハッカーから流出したデータベースを販売するフォーラム「Raidforum」では、ギガバイト単位のIDカード情報〜暗号通貨の認証に使われるデータまで多種多様な個人情報の取引が行われていた。

 

公安省の報告書によると、2019年〜2020年にかけて数百の個人・組織が個人情報販売に関与しており、違法に販売されたデータの量は約1300GBに達している。

 

2019年にはFacebookサーバーからベトナム人ユーザーの記録5000万件が流出し、今年7月には教育サイトの主要データベースからハッキングしたとされるメール、電話番号、フルネーム、住所といった3000万人の個人情報がネット上に公開された。

 

詐欺対策サイバーセキュリティ・プロジェクトの創設者であるゴー・ミン・ヒエウ氏によると、Raidforumのような「データ市場」が閉鎖されてからは、データブローカーはその匿名性と利便性に注目し「Telegram」のようなメッセージングプラットフォームを通じて、あらゆる形やサイズのデータベースの取引を行っている。

 

個人情報は少額の資金で容易に購入することが可能となっており、IDカード情報のデータベースはわずか5000ドン(約29円)〜の金額で取引が行われる。

 

同氏は、「データを流出させた代償を払うのはユーザーである」と述べ、ネットユーザーに対し自身の個人情報の取り扱いに慎重になるように警告している。

 

現在、公安省とベトナム政府によって個人情報保護のための政令に関する協議が進められている。

 

 

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