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高齢化社会のベトナム、人口黄金期の残存期間活用が命運を分ける
<写真:VnExpress>
ベトナムは世界で最も人口の多い15カ国の中でも豊富な労働力を有する国であるが、同時に急速な高齢化にも直面しており、残された人口黄金期を活用できなければ今後の経済成長を維持することは難しい。
国連人口基金(UNFPA)によると、現在までのわずか200年ほどで世界人口は7倍に急増し、今後は2030年に85億人、2050年に97億人、2080年に104億人に達することが予想されている。
前世紀にはベトナムの年間人口増加率は常に世界平均を上回り、南北統一後の約50年で4700万人から1億人へと2倍以上に増加した。
しかし、同国では2000年代初頭から出生率が低下し、現在は高齢化が急速に進行している。UNFPAによると、同国は世界で最も高齢化が進む国の1つである。
ベトナムは2019年から現在まで、世界で最も人口の多い国において15位を維持し、人口密度は6位、一人当たりの年間所得は4010ドル(約56万4000円)で9位となっている。この所得水準は低中所得グループに属し、日本の10倍以下、米国の19倍以下である。
ベトナムは2007年〜2039年までは少なくとも2人の生産年齢人口が扶養家族を養育する人口黄金期にあり、豊富な労働力が経済的なメリットをもたらしている。しかし、人口は増加したが量的にも質的にも63の省・市間で不均衡な発展を遂げており、出生率には地域間で大きな差がある。
また、大都市への人口流出が都市と農村の人口配分を不均衡にし、各地の平均所得と平均寿命の格差が広がっている。
地域別ではベトナム東南部の人々の所得が全国で最も高く、中でもビンズオン省は月収810万ドン(約4万8000円)で最上位、ハザン省が月収210万ドン(約1万3000円)で最下位となっている。
ベトナム東部の6省・市は最も平均寿命が高く、バリア=ブンタウ省が76.4歳で1位となっており、最下位のライチャウ省より8.5歳長い。山岳地帯であるライチャウ省は1k㎡当たりの人口密度が53人と国内で最も人口の少ない地域でもある。
人口密度が最も高い地域はホーチミン市で、全国平均の1k㎡当たり300人に対して1k㎡当たり4481人となっている。
国民経済大学のザン・タイン・ロン教授によると、人口黄金期は各国にとって1度切りの機会である。
ベトナムでは政府が人口ボーナス後に夫婦が2人の子供にとどまるように奨励する政策を実施し、平均出生率が3.5人から2.1人に減少した。構造変化によって子供の数が徐々に減少して労働力が優位を占めるようになり、豊富な若年労働力が国民経済を躍進させるための好条件が整った。
ハーバード大学のデービッド・ブルーム教授の研究によると、20世紀後半の東アジア諸国の奇跡的な成長には労働力の急増による恩恵が約30%寄与している。
日本と韓国は1963年と1987年に人口黄金期を迎え、その30年後に両国とも一人当たり所得が跳ね上がり、それぞれ3万7000ドル(約520万7000円)、3万2000ドル(約450万3000円)と数十倍に増加して豊かな国となった。
しかし、全ての国が同様という訳ではなく、タイでは人口黄金期が1992年に始まって約30年後に老齢期に入ったが、一人当たりの所得は約3倍の7100ドル(約99万9000円)まで増加したのみで、同国は豊かな国となる前に中所得レベルで停滞する危機にある。
ロン教授は「人口黄金期は単なる機会であり、利用するための適切な戦略を持っていなければ意味を成さない」と指摘している。
ベトナムは2017年に党中央委員会が人口黄金期を活用して人口高齢化に適応する解決策がないことを認めた後、人口政策は家族計画からあらゆる側面への包括的な焦点へと移行し、人口黄金期の機会を効果的に活用することになった。
残り16年の人口黄金期の機会を効果的に活用しようとする一方で、ベトナムは同時に高齢化問題を解決しなければならない状況である。
UNFPAによると、ベトナムの人口は2051年にピークを迎えて1億700万人に達し、その後減少に転じる。また、統計総局は2066年に人口が1億1700万人に達した後には下り坂になると予測している。
世界的に見ても男女平等格差の縮小が出生率の低下を招き、女性が教育や雇用の機会を得ることで以前の世代よりも子どもを産む数が減る傾向にあり、ベトナムもこの流れから外れていない。
ベトナムの合計特殊出生率は2000年代に入ってから女性1人当たり2.1人という水準を下回っており、同国政府は2030年までの人口戦略で、合計特殊出生率を2人〜2.2人に維持することを目標としているが、女性の出生率低下傾向を逆転させた国はまだない。
UNFPAによると、ベトナムは栄養状態と保健制度、生活環境の改善によって子どもの死亡率が減少し、1976年には5歳未満の子ども1000人につき76人が死亡していたが、現在は1000人当たり21人となっており、同所得水準の他国よりはるかに低いものとなっている。
同時にベトナム人の平均寿命も伸びて上位中所得国の平均水準に近づいており、南北統一後に生まれた子供の平均寿命は65歳であったが、現在の平均寿命は74歳まで伸びた状態である。
これらの要因によってベトナムは高齢化社会への移行を加速させており、2015年には65歳以上の人口比率が総人口の7%を超えて高齢化が始まった。現在の高齢者割合は9%で東南アジア3位となっているが、ベトナムの平均所得は6位にとどまっている。
ベトナム政府は2025年までに現役世代の55%が年金を受給できるようになるとしているが現時点では22%強に過ぎず、社会保険ネットワークは依然として目標カバー率に達していない。
ロン教授によると、ベトナムでは高齢者の割合が増加して無年金者が過半数を占めるようになり、社会保障制度に大きな圧力が掛かるという。もし、ベトナムが残された人口黄金期を効果的に活用できなければ、高齢化の嵐の中で急速な経済成長を達成することは更に難しくなる。
ベトナムでは2036年に65歳以上の人口比率が14%を超えると予想されており、高齢社会になるまでに課題へ取り組むことが急務となっている。
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