ベトナムの医療保険ガイド|外国人の加入条件・保険料・民間保険の選び方
目次
ベトナムで長く生活するなら、病院選びと同じくらい早めに確認しておきたいのが医療保険です。特に日本人の駐在員・現地採用者は、ベトナムの公的医療保険(BHYT)の加入対象かどうかと、会社の民間医療保険でどこまで補えるかを分けて確認する必要があります。
この記事では、外国人労働者の加入条件、保険料、給付割合、2026年に変わった制度、民間医療保険を選ぶ際のポイントまで、日本人がベトナムで生活するうえで必要な情報に絞って整理します。
最終確認:2026年9月2日
公的医療保険制度は法令・運用が改定されることがあります。勤務先の加入手続きや実際の給付可否は、会社の人事・労務担当者やベトナム社会保険機関、利用予定の医療機関で最新条件をご確認ください。
この記事のポイント
- ベトナムの公的医療保険(BHYT)の人口カバー率は、2026年6月末時点で96.91%
- 外国人でも、ベトナムの雇用主と12カ月以上の有期労働契約で働くなど条件を満たすと強制加入対象
- 対象となる労働者の保険料率は4.5%で、原則として雇用主3%・労働者1.5%
- 法定の給付割合は主に80%・95%・100%だが、実際の支払額は対象医療費や受診方法などで変わる
- 日本語対応、国際病院、キャッシュレス、海外搬送を重視する場合は、会社の団体保険や民間医療保険の内容を併せて確認する
結論|まず公的保険の加入状況を確認し、足りない部分を民間保険で補う
ベトナムで働く日本人は、最初に自分が公的医療保険(BHYT)の強制加入対象かを勤務先へ確認しましょう。条件を満たす外国人労働者はBHYTの対象です。
一方、公的保険と民間保険は役割が異なります。国際病院や日系クリニックを使いたい、日本語でサポートを受けたい、キャッシュレス診療や緊急搬送まで備えたいという場合は、勤務先の団体保険や任意の民間医療保険も確認するのが実用的です。
| 比較項目 | 公的医療保険(BHYT) | 民間医療保険 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 法律に基づく医療費給付 | 契約内容に応じて公的保険では足りないニーズを補完 |
| 外国人の加入 | 一定条件を満たす労働者は強制加入 | 任意。加入資格は商品ごとに異なる |
| 保険料・補償 | 法令で料率・給付割合を規定 | 年齢、補償範囲、地域、免責、既往症などで異なる |
| 受診先 | 登録医療機関、紹介・受診ルール、給付対象範囲などが影響 | 提携病院ネットワークや契約条件による |
| 日本語・キャッシュレス | 制度そのものに日本語サポートが付くわけではない | 商品・アシスタンス会社・提携病院によって利用可能 |
| 海外搬送 | 民間保険のような海外搬送特約を前提とした制度ではない | 商品によって緊急搬送・本国送還などを補償 |
ベトナムの公的医療保険(BHYT)とは
ベトナムの公的医療保険は、ベトナム語で「Bảo hiểm y tế」、略してBHYTと呼ばれます。医療保険は社会保険(BHXH)とは別の制度ですが、ベトナム社会保険機関が制度の実施や基金の管理を担っています。
加入者は拡大しており、ベトナム社会保険の2026年上半期報告によると、2026年6月末時点で約9,910万人がBHYTに加入し、人口カバー率は96.91%でした。
外国人も公的医療保険の強制加入対象になる
外国人だからBHYTの対象外になるわけではありません。改正医療保険法では、ベトナムで働く外国人労働者について、次の条件を満たす場合を強制加入対象に含めています。
- ベトナムの雇用主と労働契約を締結している
- 12カ月以上の有期労働契約で働いている
- 法律上の除外条件に該当しない
主な除外条件
- 外国人労働者に関する法令上の企業内異動者に該当する場合
- 労働契約締結時点で法定の退職年齢に達している場合
- ベトナムが加盟する国際条約に別の規定がある場合
「駐在員だから自動的に対象外」とは限りません。
企業内異動に該当するかどうかは、実際の赴任形態・労働契約によって確認が必要です。会社の人事・労務担当者に、自分のBHYT加入区分を確認してください。
会社員の公的医療保険料は4.5%が基本
外国人労働者を含む対象労働者のBHYT保険料は、強制社会保険の算定基礎となる月額賃金を基準に4.5%です。負担割合は雇用主が3分の2、労働者が3分の1となるため、一般的には次のように整理できます。
| 負担者 | 負担率 |
|---|---|
| 雇用主 | 3% |
| 労働者本人 | 1.5% |
| 合計 | 4.5% |
給与明細で本人負担分が控除される場合でも、単純に「総支給額の1.5%」とは限りません。法令上の算定基礎となる賃金を使うため、具体的な計算は勤務先へ確認するのが確実です。
給付割合は80%・95%・100%|ただし「総額の○%」とは限らない
BHYTの法定給付割合は、加入者の区分などに応じて主に80%・95%・100%です。一般の「その他の対象者」は80%が基本で、一部の政策対象者などは95%または100%となります。
80%
一般の「その他の対象者」に適用される基本的な給付割合。
95%
年金受給者など、法律で定める一部の対象者に適用。
100%
政策対象者、一定の初期医療機関での診療、一定条件を満たす長期加入者など法律上の要件に該当する場合に適用。
ここで注意したいのは、80%・95%・100%という数字が、必ずしも病院の請求総額にそのまま掛かるわけではないことです。BHYTの給付対象となる医療費の範囲、登録医療機関、紹介・受診ルール、希望診療による差額などによって、実際の自己負担は変わります。
2026年から100%給付となった対象もある
2026年1月1日から、BHYTに加入する近貧困世帯の人と、75歳以上で社会的退職給付を受けている人について、給付範囲内の医療費が100%給付となりました。
2026年7月から一部の外来受診ルールも変更
2026年7月1日からは、登録先・紹介手続きに沿わず一部の基礎・専門医療機関で外来受診した場合、制度上の条件に応じて本人の給付割合の50%が支払われるケースがあります。
「BHYTに入っていれば、どの病院でも常に80%支払われる」という理解は正確ではありません。受診先でBHYTが使えるか、紹介状が必要か、どの費用が給付対象かを事前に確認してください。
日本人が民間医療保険も確認したい理由
日本人がベトナムで生活する場合、公的保険の加入有無とは別に、勤務先の民間医療保険・海外旅行保険・国際医療保険などの補償内容を確認しておくと安心です。
- 日系クリニックや国際病院を利用したい
- 提携病院でキャッシュレス受診したい
- 日本語で医療アシスタンスを受けたい
- 入院だけでなく外来診療も補償したい
- 緊急時の医療搬送・本国送還まで備えたい
- 歯科、妊娠・出産、健康診断などのオプションを検討したい
ホーチミンの病院を探す場合はホーチミンの病院・クリニックガイド、ハノイではハノイの病院・クリニックガイドも併せて確認すると、保険と受診先をセットで整理しやすくなります。
民間医療保険・医療サポートの例
民間保険は商品改定が多いため、「会社名だけ」で選ぶのではなく、現在販売されている商品、加入資格、提携医療機関、免責・待機期間を確認することが重要です。2026年9月時点で公式情報を確認できた主な例は次の通りです。
| サービス | 確認できた内容 | 日本人が確認したい点 |
|---|---|---|
| Liberty HealthCare | Liberty Insurance Vietnamが健康保険商品を掲載。プランにより海外を含む補償地域、ダイレクトビリング、緊急医療搬送などを案内。 | 現行公式ページの加入資格欄には「ベトナム国民かつベトナムの永住者」との記載があるため、日本人駐在員・現地採用者が個人契約できるかは必ず事前確認。 |
| Bảo Việt InterCare | Bảo Việt InsuranceがInterCareの現行給付表を公開。複数プランと補償地域・入院給付などを設定。 | 加入資格、外来・歯科等のオプション、キャッシュレス対象病院、免責・除外条件を見積もり時に確認。 |
| WellBe | 保険会社そのものではなく、医療アシスタンス事業に加え、ベトナムでは保険ブローカー法人も展開。緊急対応、日本語支援、条件を満たす場合のキャッシュレス手配などを案内。 | 利用している保険商品がWellBeのサービス対象か、提携病院、事前連絡の要否、緊急時の連絡先を確認。 |
民間保険の商品名・補償限度額・加入条件・保険料は変更されます。本記事では特定商品を「最もおすすめ」と順位付けせず、選び方の基準を中心にしています。
民間保険を選ぶときのチェックポイント
- よく利用する病院・クリニックが提携先か
- 外来診療まで補償されるか、入院のみか
- キャッシュレス受診に事前承認が必要か
- 年間限度額、1回あたりの限度額、免責額がいくらか
- 既往症・持病の扱いと待機期間
- 歯科、妊娠・出産、健康診断の補償有無
- ベトナム国内限定か、周辺国・日本を含むか
- 救急搬送・医療搬送・本国送還の補償有無
- 日本語サポートの対応時間と緊急連絡先
特に重要なのは、「普段行きたい病院でキャッシュレス利用できるか」です。同じ保険会社でもプランや法人契約によってネットワークが違うことがあります。
立場別|日本人の保険確認ポイント
駐在員
まず会社の福利厚生を確認し、BHYTへの加入状況と、会社が用意する海外旅行保険・団体医療保険・医療アシスタンスの補償範囲を整理しましょう。会社の保険で国際病院や搬送まで十分にカバーされていれば、個人で追加契約する必要性は下がります。
現地採用
BHYTの加入対象になっているかを確認したうえで、会社の民間保険が入院のみなのか、外来・歯科まで含むのかを確認します。補償が足りなければ、必要な部分だけ追加する方が無駄を減らせます。
帯同家族・フリーランス
本人の会社保険で家族まで補償されるとは限りません。また、雇用契約を前提とするBHYTの外国人労働者区分に当てはまらない場合もあります。滞在期間、年齢、利用したい病院、補償地域を基準に個別に検討してください。
加入・利用前に確認する流れ
- 勤務先にBHYTの加入状況を確認する
自分の労働契約が強制加入条件に該当するか、保険料控除がどうなっているかを確認します。 - 会社の民間保険・アシスタンスを確認する
補償限度額、外来、歯科、妊娠、搬送、家族補償などを確認します。 - 普段使う病院から逆算して不足分を比較する
候補の病院がキャッシュレス対象かを先に確認し、必要であれば複数社から見積もりを取ります。 - 保険証・アプリ・緊急連絡先をすぐ出せる状態にする
受診時の手続きや事前承認の方法も家族と共有しておくと安心です。
よくある質問
外国人は全員BHYTに入らなければいけませんか?
いいえ。外国人全員ではありません。ベトナムの雇用主と12カ月以上の有期労働契約で働く人などが対象で、企業内異動者や契約時点で退職年齢に達している人などには除外規定があります。
BHYTが80%給付なら、病院代の80%が必ず返ってきますか?
必ずしもそうではありません。80%は給付範囲内での法定給付割合で、給付対象外の費用、受診先・紹介ルール、希望診療の差額などにより自己負担額は変わります。
公的医療保険だけで十分ですか?
利用したい医療機関や必要なサポートによります。国際病院、日本語支援、キャッシュレス、海外搬送などを重視する場合は、勤務先の民間保険や個人保険の内容も確認してください。
民間保険は保険料が安い会社を選べばよいですか?
価格だけでは判断しにくいです。提携病院、年間限度額、外来補償、免責、既往症、待機期間、補償地域、搬送条件を比較してください。
まとめ
ベトナムの医療保険は、公的医療保険(BHYT)と民間保険を分けて考えると整理しやすくなります。条件を満たす外国人労働者はBHYTの強制加入対象で、対象労働者の保険料は原則4.5%、雇用主3%・本人1.5%です。
一方、実際の受診では、BHYTの給付割合だけでなく、受診先や給付対象範囲も自己負担に影響します。国際病院、日本語サポート、キャッシュレス診療、搬送まで重視する場合は、会社の団体保険や民間医療保険も含めて確認しましょう。
確認しておきたいこと
- 自分がBHYTの強制加入対象か
- 給与から本人負担1.5%がどの基準で控除されているか
- 登録医療機関と受診・紹介ルール
- 会社の民間保険で使える病院とキャッシュレス条件
- 家族補償、既往症、外来、歯科、搬送の範囲
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