最低賃金の引き上げ、現実のニーズとの相違に労働者は困窮

2022年06月20日(月)11時07分 公開
最低賃金の引き上げ、現実のニーズとの相違に労働者は困窮

〈写真:VnExpress〉

 

最低賃金の引き上げは労働者の助けにはなっておらず、労働者の多くはIDカードなどの個人的な書類を担保にするなどして借金をしなければ生きていけない。

 

先週16日、ハノイ市で開催された最低賃金に関する会議で専門家は、最低賃金に関して厳しい評価を行った。

 

ベトナム労働総連合傘下の労働組合研究所(IWTU)の責任者であるヴー・ミン・ティエン氏によると、3月に労働者2000人以上を調査した結果、約35.5%の労働者が月に3~4回お金を借りなければ生活していけない現状となっている。

 

過去5年間、いくつかの調査により、30%以上の労働者が常に貧しく、貯蓄もなく、授業料、家賃、病院の費用を支払うために常にお金を借りたり、所持品を質入れしなければならないことが明らかになった。

 

ティエン氏は、「不動産投資のためにお金を借りている労働者には会ったことがない。病気などにより残業ができなくなった労働者は、すぐに借金を背負うことになる。7月から最低賃金が6%上がるが、燃料費の高騰がインフレを招いており、労働者の生活はより一層苦しくなる」と話す。

 

平均月収500万〜700万ドン(約2万9100〜4万740円)には管理職の給与も含まれているため、入社したばかりの労働者の実際の収入はさらに低くなる。

 

労働組合は労働者の基本給を上げるよう交渉の際に努めるべきであり、企業も物価が上昇した際には燃料や食事などの経済的支援などの手当を調整すべきである。

 

企業によっては、労働者の基本給を上げる一方で、福利厚生を削減することを選択するところもある。このような解決策は、労働者の就業意欲をそぐだけでなく、長期的には生産性を低下させる。

 

ハノイ市のプラミー社の労働組合長であるハ・ティ・フォン・アイン氏によると、同社には労働者700人以上が在籍しており、その93%が女性である。テキスト会社の地域別最低賃金は468万ドン(約2万7240円)で、全地域の中で最も高い。同社の労働者の平均月給は、残業代や手当を含まず、約568万ドン(約3万3060円)である。

 

最低賃金の468万ドン(約2万7240円)は2年前なら通用したかもしれないが、今では通用しない。燃料価格が上昇し、インフレが進む中、労働者は可能な限り貯蓄をしなければやっていけない。

 

50%の労働者は、子供が病気になったり、何らかの理由で病院に行かなければならない場合、月末に間違いなくお金を借りなければならなくなる。

 

郊外では、公立学校は通常午後5時に閉まり、親は午後6時半まで残業することが多いため、労働者は子どもを公立学校に通わせることが困難である。祖父母に子どもの世話を頼めない労働者は、子ども1人につき月額約150万ドン(約8730円)の最低授業料で、私立学校に通わせるほか選択肢はない。

 

これは、労働者にとって大きな負担となる。例えば、地方から移住してきた家族の収入は月1200万ドン(約6万9840円)程度であり、幼稚園と小学校に通う2人の子どもがいる場合は、1カ月に600万〜700万ドン(約3万4920〜4万740円)の費用がかかる。つまり、食費や家賃はもちろんのこと、その他の費用にも500万〜600万ドン(約2万9100〜3万4920円)しか残らないことになる。

 

したがって、工場労働者が直面する典型的な状況を考えると、月収を増やすために残業をしたり、別の収入源を見つけたりする以外に選択肢がない。プラミー社の労働者の約6%が家賃を支払わなければならないため、同社はすでに家賃を支援する労働者のリストを作成し、この措置の承認を待っている。

 

アイン氏は、「労働組合のメンバーであると同時に労働者でもある私たちは、当局が最低賃金の引き上げ以外にも、労働者を支援する政策を展開し続けることを望む」と語る。

 

労働科学・社会問題研究所の前所長であるグエン・ラン・フン氏は、最低賃金設定に対するベトナムのアプローチは、労働契約に大きく依存していると指摘する。

 

契約を結んでいる労働者は全体の60%程度に過ぎず、社会保険に加入するためには少なくとも1ヶ月間の契約が必要という政策により、多くの労働者が社会的セーフティーネットから排除されている。

 

賃金に関する議論や交渉は、しばしば上昇率に焦点が当てられるが、実際に重要なのは、最低賃金の上昇によってどれだけの人々が恩恵を受けるか、労働者グループにどのような報酬が支払われるかである。

 

フン氏は、特に単純労働や時給制の労働者について、もっと大規模な調査を実施する必要があり、最低賃金の引き上げは、労働者が実際に必要としている保護や支援に合致するものでは決してないと指摘する。

 

一方、最低賃金の調整は企業にとってコスト高になりかねないため、政府は雇用主を支援する措置も導入し、生産性と安定性の両方を確保する必要がある。

 

フン氏は、7月から最低時給を1万5600~2万2500ドン(約90〜131円)で導入することにより、企業が残業代や社会保険を払わなくて済むように最低月額賃金から最低時給に変更するなど、意図しない結果につながる可能性があると指摘する。

 

当局は、より的を絞った、より効果的な他の政策介入を考えるべきである。

 

 

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