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都市部の手頃な住宅の供給停滞、復活の兆しは見えず
<写真:fireant.vn>
ベトナムの主要都市、特にハノイ市とホーチミン市では、住宅市場における供給と需要のバランスが大きく崩れ、手頃な価格帯の住宅への需要が高まり続ける一方で、供給が追いつかない深刻な状況が続いている。
住宅市場の偏りは住宅購入者、不動産開発業者、政策立案者に複雑な課題を突きつけている。
ベトナムの不動産市場は、新規供給や政府の支援政策により活況を呈しているが、新規供給の多くが高級住宅に偏重しており、大多数の市民が求める手頃な価格の住宅は「置き去り」にされた状態である。
この結果、供給と需要のギャップが一層広がっている。
ベトナム不動産仲介協会(VARS)の調査によると、1㎡当たり2500万ドン(約15万2500円)以下の手頃な価格帯の住宅はここ数年「絶滅状態」にあり、ハノイ市やホーチミン市では復活の見込みがほぼないという。
特に、2018~2023年における供給構造の統計データによれば、手頃な価格帯の住宅の供給割合は急減し、高級・超高級住宅に偏る傾向が顕著になっている。
2024年1月以降の9カ月間で新規販売されたハノイ市とホーチミン市の住宅供給の約80%が1㎡当たり5000万ドン(約30万5000円)以上の価格帯であり、手頃な価格帯の住宅は事実上市場から姿を消した状態である。
ハノイ市では、2018年に新規供給の35%を占めていた手頃な価格帯の住宅が、2020年には12%、2021年以降は4%にまで低下し、ホーチミン市では2018年の20%から2021年には完全に消滅した。
一方、住宅価格の上昇にもかかわらず、新規販売の多くは販売直後に完売するほど高い需要を維持しており、この状況が価格上昇をさらに加速させ、多くの市民が購入を諦めざるを得ない状況に陥っている。
手頃な価格の住宅が不動産開発業者から敬遠される主な理由は、この分野の利益率が低いことにある。土地取得費用や建設コストの抑制が求められるため、高級住宅と比較して収益性が劣る点が課題である。
VARSの専門家によると、ハノイ市やホーチミン市の中心部で手頃な価格の住宅プロジェクトが再び現れる可能性は低い。
2023年から2024年初めにかけて、新規の手頃な価格帯の住宅プロジェクトはほぼ承認されておらず、現在進行中のプロジェクトの多くも高級住宅に集中している。
さらに、土地利用や都市計画に関する煩雑な法的手続きが開発の大きな障害となっている。承認プロセスの長期化や都市部での土地不足により、開発業者は投資リスクを回避するため、高収益が見込める高級住宅に注力せざるを得ない状況にある。
加えて、低所得者層や中所得者層向けの住宅購入支援策も十分ではない。低金利ローンや資金援助プログラムは存在するが、利用しやすい形にはなっておらず、手続きの複雑さも課題として挙げられる。
VARSによると、手頃な価格の住宅供給を改善するためには、政府の積極的な介入が必要である。具体的には、土地税や法人税の減免、建設密度や土地利用率の緩和、商業用住宅プロジェクトへの優遇政策などを導入することで、開発コストの削減を図るべきであるとしている。
また、許認可手続きの迅速化や土地計画の優先承認などにより、プロジェクト開発期間を短縮し、投資リスクを軽減することが求められる。
さらに、政府と民間のパートナーシップによる低価格住宅プロジェクトの推進も一案として挙げられる。政府が土地や法的支援を提供し、民間が建設と開発を担う形で供給を増やすことが期待されている。
供給拡大と並行して、住宅購入を支援する政策の強化も必要である。優遇金利ローンの提供や簡素化された融資手続きの実現により、より多くの市民が手頃な価格の住宅を購入可能な環境を整えることが重要である。
この課題に対処するためには、政府、民間、不動産業界が一体となり、包括的なアプローチで対応することが不可欠となる。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。