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地盤沈下と海面上昇が同時進行、ホーチミンの都市インフラに迫る危機
<写真:vneconomy.vn>
ホーチミン市では年間平均2〜5cmに及ぶ地盤沈下と、年間約1cmの海面上昇という二重の環境変化に直面している。
これにより、ホーチミン市内の低地や軟弱地盤地域では土地の沈降が進行しており、都市インフラや住民の生活に深刻な影響を及ぼしている。
ビンタン区アンラック地区では、文化スポーツセンターの基礎部分に最大20cmの隙間が生じ、周辺住宅にもひび割れや傾斜などの構造被害が広がっている。
南部水資源計画調査連盟の報告によれば、同地区の累積沈下量は2005年から2017年までの12年間で81cmに達しており、市全体の平均沈下量(23cm)を大きく上回る深刻な水準である。
また、ナンヤン工科大学(シンガポール)やNASAなどの国際研究チームによる分析では、ホーチミン市の平均沈下速度は年1.62cmに達し、世界の主要48沿岸都市の中でも高い分類に位置づけられている。
現在の沈下傾向がこのまま継続すれば、2030年までに新たに約20k㎡の土地が水没リスクに晒されるとの予測が示されている。
地質学者のレ・チュン・チョン准教授は、ホーチミン市の地盤が第四紀の軟弱な堆積層(いわゆるホロシーン層)に位置していることに加え、過度な地下水の汲み上げや都市化に伴う建設物の荷重増加が沈下の主因であると指摘している。
沈下が特に顕著な地域は、南サイゴンやサイゴン川沿岸の低地帯に集中しており、地盤リスクが高まっている状況である。
同准教授は、今後の都市開発において沈下データを不可欠な計画要素とすべきであると主張し、今後5〜10年を見据えた詳細な沈下予測システムの構築と、そのデータの一般公開を提案している。
これにより、住民・投資家・行政が科学的根拠に基づいた判断を下すことが可能となり、インフラ整備や気候変動対策の効果的な実施が期待されている。
現在、ホーチミン市では約10兆ドン(約579億8000万円)を投じた高潮対策プロジェクトが完成間近であり、その運用開始により市中心部や南部低地の浸水被害軽減に大きく寄与すると見込まれている。
さらに、ホーチミン市当局は2040年を目標とした都市総合計画の中で、「三層構造」の浸水対策戦略を掲げている。
第一層は堤防や防潮門による「防御」、第二層は貯水池や運河を活用した「適応」、第三層は予測・避難体制の整備による「被害軽減」である。
また、地域ごとに適切な地盤高を設定し、新旧市街地間での排水調和を図るなど、総合的な水管理対策が進められている。
地盤沈下と水害という複合リスクに直面するホーチミン市は、都市機能の維持と市民の安全確保のため、「自然と共生する都市開発」という新たな都市像の構築を急務としている。
※ポステオリジナルニュースは各ニュースソースを参考に編集・制作しています。