ベトナムの健康診断事情 | 検査項目や労働許可証などについて説明
ベトナムの健康診断事情はどのようなものなのでしょうか? ベトナムに渡航し現地で働く人や長期滞在する人は就労ビザや労働許可証取得の関係から健康診断を受けなくてはいけない場合があります。また日本人がベトナム人と結婚する際にも健康診断を受ける必要があります。今回は健康診断に関する診察項目や労働許可証などについてハノイの日系クリニック「さくらクリニック」が監修のもと、解説いたします。
なお、本稿は以下を参照して執筆しています。
参照:健康診断(厚生労働省)
健康診断の種類
健康診断は一般健康診断と特殊健康診断の2種類に分けられます。ここではそれぞれの健康診断の目的や診察項目について説明します。
一般健康診断
一般健康診断は職種に関係なく行う健康診断です。事業者は労働安全衛生法に基づき労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があります。つまり企業で働く人には健康診断が義務づけられています。一般健康診断は以下のような種類があります。
- 雇用時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
ベトナムで就業し6ヶ月以上働く場合、健康診断を受けることが義務づけられています。また、海外から帰国し日本国内で業務を行う場合、帰国後に再度健康診断を受ける必要があります。
特別健康診断
特別健康診断とは法律で定められた有害業務に従事する労働者に対し行われます。健康診断を受けるタイミングは一般健康診断とは異なり、雇用時、配置変更時、6ヶ月に1度と複数回行われます。法律で定められた有害業務は以下の業務です。
- 屋内での有機溶剤業務
- 鉛業務
- 四アルキル鉛等業務
- 高圧室内業務または潜水業務
- 放射線業務
- 除染等業務
- 石綿などの取り扱いで石綿の粉じんが発散する場所での業務
日本では会社や保健所などが健康診断の推奨や手続きを行なってくれる場合が多いですが、海外では特に個人事業者の場合、自分で管理する必要があります。困った際はベトナムの日系クリニックなどで相談するようにしましょう。
参照:健康診断の種類(厚生労働省)
【目的別】健康診断が必要なタイミングと種類
ベトナムではビザの取得や企業での就業の際に健康診断が必要になります。ここではベトナムに渡航するにあたり、目的別の健康診断について説明します。
労働許可書を取得する
労働許可書はワークパーミットとも呼ばれ、外国人がベトナムでの就労を認める許可書です。そのためベトナムで働く全ての外国人は労働許可書が必要になります。労働許可書はベトナムの市・省の労働傷病兵社会事業局や工業団地などの管理委員会より発給されています。
労働許可書申請を行う際に提出書類に健康診断書が含まれています。健康診断書は発行12ヶ月以内が有効です。しかし、実務上、6ヶ月以内のものを要求されるため6ヶ月以内の健康診断書を用意する必要があります。健康診断書は日本で発行されたものでもベトナムで発行されたものでも有効です。ここでは日本で発行する場合とベトナムで発行する場合に分けて紹介します。
日本で健康診断書を発行する
健康診断書は医療機関または保健所で発行し取得することが可能です。近所の病院や診療所、内科クリニック、保健所などに問い合わせ、健康診断書を発行できるか確認しましょう。問い合わせる際に健康診断書の発行費用などを確認しておくと安心です。
日本で発行された健康診断書を申請する場合、ベトナム語へ翻訳・公証する必要があります。
ベトナムで健康診断書を発行する
ベトナムで健康診断書を発行する場合、国が定めた病院で診察を行い発行します。指定されている病院は必要受診項目を把握しているので問い合わせる際に労働許可書取得の旨を伝えるだけで大丈夫なため安心です。健康診断書の発行費用は約100ドル(約1万800円)ほどでベトナム語の診断書も発行してくれます。
さくらクリニックでは、ワークパーミット用健康診断をうけることができます。
労働許可書(ワークパーミット)取得の際に必要な健康診断には歯科検診も含まれるため、医科と歯科が両方あるさくらクリニックでは1回の受診で全ての手続きが完了します。
▶︎健康診断の詳細はこちら
参照:ベトナムにおける労働許可書/ビザ(査証)の取得手続き(日本貿易振興機構)
時期
労働許可書は海外赴任前に申請する必要があるため、健康診断も同様に海外赴任前に健康診断を受ける必要があります。しかし実際には海外赴任後でも取得が可能なため、ベトナム に渡航後に現地の病院で健康診断を受けることも可能です。
種類
一般健康診断
項目
ベトナムの労働法では健康診断も基礎項目の診断結果が必要となります。しかし、健康診断の基礎項目の具体的な内容は記されいません。ベトナムで労働許可書取得に必要な健康診断書を発行する場合、病院側が基礎項目を把握しているため安心です。下記は日本での基礎項目に該当するものです。
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、y-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
ビザを申請する
ビザとはベトナムへの入国・滞在を許可する証明書のことです。ビザの発給は出入国管理局やその他の管轄機関が行います。
就労ビザを取得の際に健康診断書が必要だと思われがちですが、就労ビザ取得の際に健康診断書は必要ありません。ベトナムで就労する場合、労働許可書発行の際に健康診断書が必要になります。
参照:ベトナムにおける労働許可書/ビザ(査証)の取得手続き(日本貿易振興機構)
入学手続きを行う
ベトナム国内のインターナショナルスクールへ入学の際や日本語学校(日本語教育機関)へ留学する際に健康診断書の提出が必要です。入学する学校により必要な書類や健康診断書のフォーマットが異なるため、具体的な書類については、直接学校へ確認する必要があります。
参照:留学手続き(在ベトナム日本大使館)
時期
健康診断書は病院によっては即日発行が可能な場所もありますが、血液検査などで診断結果が出るまでに時間がかかる際もあります。健康診断書発行まで1〜2週間程度を見積もっておくと安心です。また、再検査になった際はさらに時間を要することもあるので早めに診断して健康診断書を用意しておく必要があります。
種類
一般健康診断
項目
下記の項目が健康診断書を発行する際に必要な項目です。
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、y-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
ベトナム人と国際結婚する
日本人がベトナム国籍の人と結婚をする場合、健康診断書の提出が必要になります。発行場所は公立の総合病院で診療科目に精神科が含まれている病院です。6ヶ月以内に発給された健康診断書が必要です。
日本の病院で発給した健康診断書の場合、婚姻手続きを行う前に日本とベトナム政府の証明書の発給と認証を受ける必要があります。
時期
婚姻登録手続きの申請を行う際に健康診断書の提出が必要となるため、申請前に健康診断書を取得するようにしましょう。
種類
一般健康診断
項目
ベトナム人と国際結婚をする際には下記の基礎項目に加え、精神疾患やHIV/AIDSなどの性感染症に感染していないことが求められます。
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、y-GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
- STD検査(性感染症検査)
参照:ベトナム国籍者とのベトナムでの婚姻手続き(在ベトナム日本大使館)