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低スキルで最低賃金の出稼ぎ労働者、ベトナム政府の今後の課題
<写真:VN Express>
専門家によると、ベトナムの政策は貧しい労働者の仕事を見つけることだけに焦点を当てており、出稼ぎ労働者が海外の技術や管理スキルを取得することは考えられていない。
海外で理想と現実の乖離に困窮する労働者や、違法に海外へ滞在して不法就労する出稼ぎ労働者が増加する1つの原因となっている。
タインホア省出身のホイさん(34)が2018年に初めて日本に出稼ぎに出た際、ベトナムの自宅建設費用の約2億ドン(約121万1050円)を返済するためにお金を貯める必要があり、最初の1年間は節約のために鮭の頭と米を主に食べていたという。
最初の2年間はベトナムの同業者よりはるかに高い月収1800万ドン(約11万円)を得ており、そのうちの5分の1を自身の生活費に、残りを故郷の妻や子供たちへの送金や出稼ぎ仲介業者への借金返済に充てていた。
しかし、仲介業者への借金が今では2倍に膨れ上がっており、旅行や遊興費には一銭も使うことはできない。
ホイさんによると、日本の収入はベトナムより高いが生活費も高いため、ベトナム人労働者は仕送りのために倹約し、劣悪な環境で暮らさなければならない。
彼は過去40年間に海外に出稼ぎに行った数百万人のベトナム人の1人である。大半の出稼ぎ労働者はバリューチェーンの下位セグメントに属しており、単純作業で最低限の収入を得ることしかできていない。
台湾に出稼ぎに出ているチュットさん(47)は今年5月に台湾の最低賃金である1万7000台湾ドル(約7万7970円)で家政婦として労働する契約を結んだ。台湾政府は8月に最低賃金を2万台湾ドル(約9万1740円)に引き上げたが、チュットさんは既に契約書にサインしているため、今後3年間は賃上げされることはない。
多くの家庭が家政婦にチュットさんの給料のほぼ2倍である月3万3000台湾ドル(約15万円)を支払っている。彼女と一緒に台湾に来た4人のベトナム人のうち3人は仕事を辞め、別の場所で高い賃金の違法労働をしているという。
ベトナム人労働者と台湾の雇用主をつなぐ仲介業者によると、多くのベトナム人が家族や高齢者の世話といった台湾現地の人がやりたがらない仕事をして台湾の最低賃金を得ている。
日本で3年間働いて2020年に帰国したアンさんは、多くのベトナム人が表向きは「帰国後に役立つ技術訓練を受けること」を目的として海外へ行くが、あくまでも「表向き」でしかないと指摘する。
ベトナムからの出稼ぎ労働者は通常、建設機械の操作や在庫の確認などを任されるが、これらの業務は高いスキルを必要とせず、最低限の給与しか与えられない。
専門家によると、日本や韓国に行く労働者のほとんどは月収1000〜1800ドル(約14万3400〜25万8110円)で低スキルの仕事に従事しており、言語能力も限られている。
日本に労働者を派遣しているEsuhaiのグエン・スアン・ライン副社長は、ベトナムの政策は貧しい労働者の仕事を見つけることだけに焦点を当てており、出稼ぎ労働者が海外の技術や管理スキルを取得することは考えられていないと指摘する。
今後のベトナムにとって特定の分野に優先的に取り組むことや、海外にいる熟練労働者の割合を増やすことが非常に重要である。
帰国労働者の多くは海外で得た給料でベトナムに家を購入したりすることが可能ではあるが、海外にいる間にスキルが向上しないため、大半の人が仕事を見つけるのに苦労している。
ベトナム政府は出稼ぎ契約満了後に労働者を帰国させる事にも頭を悩ませている。多くの出稼ぎ労働者が帰国後に同様の高収入を得られないことを恐れて海外に不法滞在することを選択する。
この不法滞在が原因で主要な労働市場では度々反発が起きている。
台湾は2005年にベトナム人家事ヘルパーの受け入れを停止し、2015年に解禁した。韓国は2013年〜2016年にかけて大半の分野でベトナムからの新規労働者の受け入れを停止し、今でも数千人のベトナム人が不法に滞在している。
ハティン省労働・傷病兵・社会問題局のダン・バン・ズン副局長は、2022年から30年にかけての労働力輸出問題を解決するためには完全な戦略が必要だと指摘する。
戦略がなければベトナム人労働者は低技能レベルにとどまり、国の発展に影響を与えかねない。
コンサルタント会社Economica Vietnamのマネージングディレクターであるレ・ズイ・ビン氏によると、今後10年〜15年の間にベトナムは若くて安い労働力の優位性を徐々に失い、人口の高齢化によって労働力不足に陥る可能性が高い。
ベトナムは今後、より高いスキルを持つ労働者を海外に派遣し、様々な技術に関する訓練を受けることが不可欠である。
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