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出稼ぎ労働者の家庭崩壊、不在による衝突・不仲・不倫
<写真:VN Express>
ベトナムには人生を変えるチャンスを求めて海外に出稼ぎに出る労働者は多いが、それが離婚の原因になる人も多くいる。
日本で働くロンアン省出身のクオンさんもその1人で、ビデオ電話でベトナムにいる妻と通話した際に妻の顔が腫れていることに気が付いた。
問いただすとクオンさんの妻は既婚男性と不倫していること、不倫相手の妻に殴られたことを告白した。
小さな子どもを持つクオンさんは「出稼ぎに出た際に妻が寂しがっているのは知っていた。物品の販売を行う妻が多くの男性客との接点があることは知っていたが、まさか浮気をしているとは思わなかった」と話す。
クオンさんは非常に動揺したが妻に不倫をやめて子どもの世話をするように説得し、妻は謝罪とともに2度と同じ過ちを繰り返さないと約束した。
しかし、クオンさんの妻は約束を反故にして再び不倫をし、クオンさんは仕送りとともに妻を失うことになった。
ベトナムではこの様に夫や妻の海外出稼ぎが原因で家庭が崩壊することが決して珍しいことではない。
中部ハティン省ギースアン(Nghi Xuan)郡クオンザン(Cuong Gian)という1つのコミューンでは200組以上の夫婦が海外出稼ぎをきっかけに離婚をした。
また、同郡のスアンリエン(Xuan Lien)コミューンには海外出稼ぎ労働者1700人以上がいるが、近年はその約半数が離婚を経験している。
10年間の出稼ぎ労働を終えて帰国した労働者のティンさんは、帰国後に妻や子どもたちから冷たさや余所余所しさを感じた。
ティエンさんの妻は彼に近寄ろうともせず、キスやハグも拒否するようになった。同じベッドで寝ることもなくなったという。
また、子どもたちは幼い頃からティエンさんが不在であることに慣れてしまっており、彼を父親と呼ぶことに抵抗を示していた。
ティエンさんは自分が家の中で透明人間になっているように感じ、妻には「気持ちがなくなったのなら離婚していい」と伝えた。
両親の離婚を経験したニンさんは離婚は母親が台湾に出稼ぎにいったことが原因であると考えている。母親が不在の10年間、ニンさんはアルコール依存症の父親と姉と3人で暮らしていた。
母親が出稼ぎに出てから父親の飲酒回数は日に日に増加し、ニンさんら子どもたちのことをあまり気に掛けることはなくなった。
母親の帰国後に両親の関係性の崩壊は加速していき、父親は以前とは違って仕事もろくにせず、母親と口を聞くこともほとんどなくなっていた。
ニンさんは「父親は家の中で幽霊のような存在になっていた。母親が営むテーラーに顧客が来る度に店頭に現れてはトラブルを起こしていた。酒のせいで精神や行動がおかしくなったか、母親が出稼ぎで不在の間に子ども2人の面倒を見ていたことに不公平感を感じていたのかも知れない」と当時の状況を思い出す。
父親の変化や家庭の崩壊に落ち込んだニンさんの母親は離婚を決意し、ニンさんと妹を連れて父親の元から離れた。
Vinh大学のチュン・ティ・タイン心理学部長によると、人は10年〜20年海外で生活することで現地ライフスタイルからの影響を受け、考え方が変わって家族と衝突してしまう傾向が増加する。
労働・傷病兵・社会問題省によると、ベトナムは1980年代から労働力輸出を開始し、現在では毎年10万人以上が海外に働きに出ている。
ベトナム人労働者は40以上の国と地域に存在し、毎年30億ドル(約4329億7650万円)以上の送金を行っている。
タイン氏は出稼ぎ先から家族を養うために送金をする人がいる一方で、パートナーがそのお金をギャンブルや飲酒などに悪用し、紛争や家族の崩壊につながることもあると指摘する。
前述のクオンさんは「海外に出稼ぎに行ったことを後悔していない。今は日本で新しい生活を築いている。子ども2人を連れて来てより良い生活をさせることに集中している」と話す。
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