ベトナム家族生活の変化、地方から都市部へ移住する高齢者が一部増加

2023年05月11日(木)09時25分 公開
ベトナム家族生活の変化、地方から都市部へ移住する高齢者が一部増加

<写真:VnExpress>

 

ベトナムの家族形態は核家族化が進行しているが、パンデミック以降に子供が両親のために自身の近隣へ宿泊施設を購入する動きがトレンドになっており、地方から都市部へ移住する高齢者が増加しているという。

 

タインホア省在住であったルオンさんは72歳の時に、子供たちの近くに住むために田舎の不動産を売却してハノイ市にマンションを購入し、多くの人を驚かせた。

 

ルオンさんの息子は結婚後にタインホア省からハノイ市に転居した。2018年に孫が生まれ、ルオンさんの妻は子供の世話を手助けするためにハノイ市に転居したという。

 

タインホア省に一人残ったルオンさんは浴室で転倒して頭を切り、30分ほど血を流して気絶する事件が発生した。

 

事件を知った息子は罪悪感に苛まれ、母親(ルオンさんの妻)がタインホア省に戻ってルオンさんの面倒を見ることができる様に、子供をすぐに幼稚園に行かせた。

 

ルオンさんによると、妻はタインホア省に帰って来てから「子供や孫が恋しい」とため息を付き、非常に寂しそうな様子であったという。

 

ルオンさん夫妻の「子供や孫と一緒にいたい」という思いと「公務員の収入だけで家を買うのは難しい」という子供たちの心配が重なり、2人は親から譲り受けた家を売るという決断をした。

 

ルオンさんはタインホア省に100㎡の土地を残し、残りを60億ドン(約3430万円)以上で売却し、3人の妹にそれぞれ10億ドン(約570万円)を渡したという。残りの金額はハノイ市に3LDKのアパートを購入した後、いざという時に向けて貯蓄に回した。

 

現在は同市ナムトゥーリエム区にマンションを購入し、妻と息子、その嫁、孫の4人で暮らしている。

 

社会科学の研究者によると、ベトナムは伝統的な家族から核家族への移行が進み始めているが、大多数の高齢者が老後も子供に頼ることを期待している。

 

2021年にベトナムで行われた人口と家族計画に関する調査の結果では、同国の高齢者の大半(80歳以上の87%、70歳〜79歳の76%、60歳〜69歳の68%)が子供と同居していることが明らかになった。

 

ベトナム高齢者協会のチュオン・スアン・クー副会長によると、これらの数字はベトナムの高齢者にとって、子供と一緒に暮らすことが重要なことであることを示している。

 

また、地元メディアが約400人を対象に行った調査では、地方に親を持つ14%が「可能であれば親を都市部に連れて行き、同居か付近で暮らせるようにする」ことを選ぶと回答した。

 

ベトナムは東南アジアで最も都市化率が高い国であり、2021年の人口調査によると、ベトナム国内の転居のうち、農村部から都市部への移動が25%を占めている。

 

ベトナム国家不動産協会のグエン・ヴァン・ディン副会長は「若者がキャリアを積むために都市部に移住すればするほど、取り残される孤独な高齢者の数が増える」と指摘する。

 

同様の問題は他国でも観察されており、中国政府は2021年に高齢化による社会福祉制度の負担軽減に向け、子どもたちが親の近くに住むことを奨励する政策を打ち出した。

 

ディン副会長の観察によると、パンデミック以降に子供が両親のために住居付近に宿泊施設を購入することがベトナムで人気のあるトレンドになっており、この傾向は今後数年間で更に盛んになると予測している。

 

しかし、全ての高齢者がこの型に当てはまるわけではない。大都市圏に移り住む可能性のある人にはいくつかの共通点があり、町や自治体への在住者が多く、公務員や会社経営者であった高齢者が多い。

 

経済的に安定した人や子供が成功した人が多く、年齢もそれほど高くはないため、都市部の生活に適応しやすいという。

 

また、農業に従事している人の中には農村の家を売却して都市に移住する人もいるが、ディン副会長によると、そういったケースは稀であるという。

 

先人から受け継いだ宿舎を大切にし、農村の生活様式に慣れ親しんでいることが多いため、こうした価値観が都会で子供と一緒に生活する上で軋轢を生みやすい。

 

都市部への移住を考えている高齢者は都市部での生活に適応できず、子供と衝突する可能性があることを頭の片隅に置いておくべきことであり、地方にある不動産を売却して都市部に移住した後に行き場がないことに気づき、子供たちと解決不可能な軋轢を抱える人も少なくない。

 

ベトナム高齢者協会のクー副会長は高齢者が老後を過ごすための準備をし、資金と生活を完全にコントロールできるようにすることを提案している。

 

高齢者層は他人とコミュニケーションを取りたいという強い欲求を持っていることが多いため、行政が高齢者への感謝を促進すべきであり、地域社会は高齢者が出会い、語り合い、自分たちの利益になるようなイベントに参加するためのスペースを開発すべきであるという。

 

 

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